国枝師と鬼滅の刃とアーモンドアイ/ジャパンC(日刊スポーツ)
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アーモンドアイ(牝5、国枝)が日本競馬史上初の芝G1・8勝目を達成した天皇賞・秋(1日)、その翌週火曜朝の美浦トレセン、いつものようにスタンドと厩舎の間を歩きながら、2日前のレースを振り返る国枝栄師(65)の言葉に耳を傾けた。
大切な馬を預かり、常にプレッシャーのかかる師の状況、どのように気分転換をしているのか。そんな話題をこちらが振ると、「こないだ、映画を見に行ったんだけどね…」と師は切り出した。夫人と目的の映画を見終えた後、隣のスクリーンで上映されていた映画のタイトルが気になったという。
「『鬼滅の刃』だったんだ。そのときは知らなかったけど、しばらくしてから、テレビのニュースですごい人気だって知ってさ。そんなにブームになってるって知ってたら、そっちを見れば良かったかなって思ったよ」。愛妻家で知られる国枝師だが、孫を愛し、はやりについていきたい好々爺(や)でもある。
「それで競馬場へ行った帰りに俺も『まずは原作を読まなきゃな』と思って、本屋さんに行ったんだよ。そしたらさ、面白いんだよね。何軒か歩いたんだけど、どこへ行っても鬼滅の刃の(コミックの)最初の第1巻、第2巻がないんだ。最新刊とか比較的新しい巻はあるんだけど…。笑っちゃうよ。やっぱり、みんな最初から読もうとするからなあ」。師はニコニコしながら言った。
芝G1・8勝馬アーモンドアイの魅力を知るためには最初の1冠目(18年桜花賞)から見た方がいいし、もっと以前の2着に敗れた17年のデビュー戦(新潟)から見た方がよりいいかもしれない。
それ以上に師が伝えたかったこととは…、「最初の7冠馬である皇帝シンボリルドルフの存在を多くの人に知ってほしい」ということだった。
「ルドルフを超えたって言うけど、アーモンドアイが天皇賞・秋を勝った後、あらためて(7冠馬)ルドルフはすごいと思ったよ。当時と今とじゃ(レースの)番組が違う。今のようにG1がたくさんあったわけじゃない」。
30年以上前、美浦トレセンに入り、調教助手になったばかりの頃、国枝師が強く憧れた馬がシンボリルドルフだった。
大ヒット漫画の第1巻を手に取るように、アーモンドアイの活躍によって、新しい競馬ファンがかつての名馬の偉大さに触れてくれるなら…、アーモンドアイと記録に挑む国枝師の心は弾んでいる。