コロナ禍にフィット、地方の浴衣帯屋の逆転劇 小杉織物 業態転換の決断、訪れた白馬の「棋士」(福井新聞ONLINE)

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 新型コロナウイルス感染拡大による景気悪化で多くの企業がダメージを受けた中、起死回生の業態転換で全国に名をとどろかせた福井県内の企業がある。小杉織物(坂井市丸岡町猪爪)は、国内シェアトップの浴衣帯の受注激減の危機を乗り越えるため、4月からいち早く絹マスクの販売を始めた。品質の高さで需要を取り込み、累計100万枚を突破。将棋の藤井聡太王位・棋聖も着用して注目を浴びた。変化を恐れず奔走した7カ月間の挑戦を振り返る。  浴衣帯はインバウンド(訪日外国人客)向けの貸衣装用で販売を伸ばしていたが、新型コロナで受注がほぼストップ。花火大会や祭りも相次いで中止が決まり、和装業界は壊滅的な打撃を受けた。  仕事がない―。3月31日、小杉秀則社長(63)は従業員を前に頭を下げた。「私の力ではどうすることもできない。申し訳ない」。声を絞り出し、4月から半数ずつ休むよう告げた。  ただ活路を開かねば従業員たちの雇用は守れない。1937年創業の老舗。マスクは使い捨てのイメージで、高価格帯を扱う帯屋のプライドもあったが、幹部に「マスクを作ってみたい。シルク製は小杉にしかできない」とも伝えた。  帯で使う生地に、ガーゼと感触が近い絹がある。湿度や温度調整の機能がある最適の素材。鼻の形に合わせる形状記憶のワイヤは在庫があり、耳ゴムは自社の織機で対応できた。試作を始めてわずか5日で「洗える絹マスク」を完成させた。小杉社長は「幸運だった」と振り返るが、デザインや縫製を含め一貫生産体制を敷いていた強みが窮地で生かされる形となった。  絹マスクはネット業者の目に留まり、3日間で注文が1万5千枚に達した。従業員を全員出社させ、ミシン30台を引っ張り出し24時間体制で生産に入った。   ◇  ◇  ◇  息が楽で肌に優しく、洗って繰り返し使える絹マスク。1日8千枚のフル生産が続いていた4月末、県内の年配男性から注文が入った。妻が末期がんで「シルクのマスクを着けさせたい。1枚でもいい」。いったんは断ったが、すぐに届けることにした。  帯製造に携わり42年。小杉社長は「時代に必要とされるものを必要な人に届けて喜んでもらえる。これがメーカーの使命なんだ」  母の日向けの贈答用マスク、アパレルと共同でファッション性の高い商品など、思いつくアイデアをすぐに形にする「攻めの姿勢」を貫き、事業を拡大した

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(2020/11/23)