日常の延長にある哀歓が心に迫る 映画「ホテルローヤル」(夕刊フジ)

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 【エンタなう】  映画「ホテルローヤル」(公開中)に登場する男女は、「2時間3800円」の空間で、ペーソスあふれる非日常をさらけ出す。実家のラブホテルを舞台にした桜木紫乃の直木賞受賞作が、7つの短編を軸に、現代と過去を上手く交錯させる形で映像化された。 【写真】「ホテルローヤル」の完成報告会に出席した波瑠  田舎にポツンと建つラブホテルで育った経営者の一人娘・雅代(波瑠)は、美大受験に失敗して家業を手伝うことに。酒に溺れる父(安田顕)、浮気に走る母(夏川結衣)とは距離を置きながら、生きる目的を見いだせず、営業にくるアダルトグッズ会社の宮川(松山ケンイチ)に秘めた思いを抱く。  誰にも言えない秘密や孤独を抱えた人々が訪れる客室の換気ダクトからもれる喘ぎ声とは対照的に、窓の外には釧路湿原の美しい自然があふれている。仕事から目を背けるように風景画の絵筆を走らせる雅代。繊細で芯の通ったヒロインに、抑えた美が漂う波瑠の表情が重なる。  やがて生真面目な雅代が、男女の機微や不仲になった両親の過去に目を向け、自分を見つけるまでの描写が丁寧だ。  余貴美子が演じるホテル従業員の切ない家族事情や、束の間の平穏を求めに来る中年夫婦客の会話など、日常の延長にある哀歓がじわじわと心迫る。北海道出身の俳優を脇に配したり、架空の人物に“なりきる”お笑い芸で知られる友近が涙を誘う回想シーンなど、芸達者たちをキャスティングした。ほっとできる1本。 (中本裕己)

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(2020/11/22)