おとな向け映画ガイド 今週の公開作品から、人間は弱くて強い、そう感じる2本をご紹介します。(ぴあ)

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今週のロードショー公開は21本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。全国100スクリーン規模以上で拡大公開される作品は『10万分の1』『君は彼方』の2本。中規模公開とミニシアター系の作品が19本です。その中から、2本を厳選し、ご紹介します。 『アンダードッグ』 『ロッキー』を始めとする、アンダードッグ(負け犬)が、最後のプライドを賭けて戦うというボクシング映画の系譜に、またひとつ名作が生まれました。主人公を演じるのは森山未來。女性ボクサーに安藤サクラを起用した『百円の恋』で強烈な印象を残し、大成功を収めた監督・武正晴、脚本・足立紳、プロデュース・佐藤現のチームが、再集結。前編・後編あわせてなんと4時間36分の、どうだ!文句あっか、という男の映画です。 晃(森山未來)は、元日本ライト級1位。タイトル戦に敗れて以降、鳴かず飛ばず。今や、若手ボクサーの踏み台にされる「かませ犬」という立ち位置で、なんとかボクシングの世界にしがみつき、デリヘルの運転手をして糊口をしのいでいます。そんな彼が、ふたりの男と宿命ともいえる出会いをし、リングで対決することになるのです。バラエティ番組の企画で初めてボクシングを経験するお笑い芸人の宮木(勝地涼)、そして、晃を倒すことを夢見てきた前途あるボクサー龍太(北村匠海)。ふたりにとっても、晃との試合が人生の大きな岐路となります。 かつて晃に夢を託したこともある父(柄本明)、別れた妻(水川あさみ)と息子(市川陽夏)、デリヘルで働く謎の女性(瀧内公美)とその娘(新津ちせ)、対戦相手の宮木や龍太をとりまく環境など、細部がきっちり描かれているし、意味深な伏線もあとできっちり回収されて、複雑な人間ドラマを観ていると時折感じるフラストレーションはありません。長時間でも飽きさせません。中心となる3人だけでなく、登場人物の多くが、それぞれどこか「アンダードッグ」的な裏面をもち、そこからはい出そうとしている、群像劇のようでもあります。 鬱屈した感情の爆発する象徴がファイトシーン。鍛えられた肉体がぶつかりあい、ほとばしる血と汗、それを撮るカメラワークもリアル、生半可なものではありません。特に、ダンサーでもある森山の身体能力と肉体が、活きています。 早朝の町。スカイツリーを近くに見上げる下町が、晃のトレーニングコースです。スタローンはフィラデルフィアの

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(2020/11/22)