APEC、米バイデン政権に期待と慎重論(産経新聞)
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【ワシントン=塩原永久】アジア太平洋経済協力会議(APEC)の参加国は、米国が政権交代を通じて、通商政策などで当該地域への関与をどう変化させるかを注視している。米大統領選で勝利を確実とした民主党のバイデン前副大統領が、APECのような多国間外交を重視するとの期待は根強い。ただ、米国内の雇用維持の観点から、大きく自由貿易に回帰することも難しいとみている。
カナダのトルドー首相は19日、APEC関連イベントで、バイデン氏が「多国間主義や環境対策などのグローバル問題への取り組みを一層強める」との展望を語った。
カナダは米国第一主義のトランプ米政権の追加関税の標的とされ、貿易協定見直しを余儀なくされた。トルドー氏は「指導者が(政策を)左右する」と述べ、政権が代われば協調重視に動くとの期待に触れた。
ただ、バイデン氏が「グローバリゼーションへの反発など米国内から多大な圧力を受ける」とも指摘し、自由貿易を推進する「理想的な過去」に戻ることは難しいと分析した。
米国はオバマ政権下の2011年、アジア太平洋地域に軸足を置く「リバランス政策」を進め、経済外交でAPECを重視した。関係国には、同政権の中枢にいたバイデン氏が、一方的な貿易対抗措置を連発したトランプ政権から政策を変化させるとの期待がある。
ただ、バイデン政権への楽観論を封じた見方は共通している。シンガポールのリー・シェンロン首相は、同政権が「ドアをあけ放って、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に加盟するような意向なのかどうかは不確かだ」と強調した。
バイデン氏もトランプ氏と同様、国内産業保護の方針を表明。米国も市場開放を迫られる通商協定締結には乗り気ではないとみる。
中国と関係が深い国が多いAPEC内では米国の対中政策の行方も気になるところだ。中国に対処する上で「冷戦型(の対抗策)は手札とはなりにくい」(リー氏)との見方から、米国の強硬な対中政策に同調しにくい事情もある。
一方、中国を国際経済に組み込めば、貿易や外交ルールを守るようになるとする米国の「関与政策」は失敗したとの見方が、米与野党に広がった。バイデン政権はオバマ政権と同様のアジア太平洋地域への「リバランス」に回帰することも許されず、過去の政権と異なる「新機軸」を打ち出すのは容易ではない。