「お助け同心が行く!」コミカルだがどっしりした小林稔侍の当たり役(夕刊フジ)

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 【生誕90年 笹沢左保 時代劇の魅力】  笹沢左保の原作時代劇の中でも、もっともコミカルなのが小林稔侍主演の『お助け同心が行く!』シリーズだろう。  北町奉行同心、尾形左門次(小林)は、街角や川岸で積み荷の高さを検分する高積見廻りという地味な役目。上役には「はいはい」と従い、町人の苦情も「そうかそうか」と聞く腰の低い下級武士である。  だが、実は頭脳明晰(めいせき)で剣の達人。親友で奉行所のエリート定町廻り同心、辺見勇助(田中健)とともに虐げられた人々のため「お助け同心」という裏の顔を持っているのだ。  小説の中の左門次は、38歳。彫りの深い顔立ちに小銀杏(こいちょう)という粋なマゲがよく似合い、粋筋の女たちにも一目置かれる男。地味な役目ながら、100坪の八丁堀組屋敷で妻子と暮らしている。  一方、ドラマでは外見もさえない中年男で、いまだ独身。事あるごとに母の八重(中村玉緒)に縁談を勧められ、「母上、その話はもう結構でございます!」と小走りで逃げ回る。実際は小林と中村は2歳違いだが、すっかり親子になってのやりとりは笑える。  そんな左門次が、「今の俺は高積見廻りじゃねえ、お助け同心だ!」とセリフもバッチリ決めて悪を斬り捨てる。役所でもみ手をし、母には頭が上がらない男が、悪人の前では猫背をのばし、強気になって剣をとると、たちまちガタイがでかくなるからびっくりだ。小林稔侍は、こういう役がとってもうまい。  笹沢作品でも『木枯し紋次郎』シリーズは、小川眞由美(出演時は小川真由美)、大原麗子ら大人の色気漂う女優陣が多かったが、『お助け同心』では、レギュラーの相川恵里をはじめ、八木さおり(出演時は八木小織)、伊藤美紀、奥田圭子(出演時は奥田佳子)、浜田朱里ら1980年代のアイドル女優が多数出ている。  最終回「消えた花嫁」では、祝言で幸せいっぱいのはずの大店の娘(越智静香)を左門次が救出したにも関わらず、娘は家に帰りたくないという。笹沢作品らしい謎解きも面白い。菅貫太郎、川合伸旺、田口計らのこってり悪役演技とともに楽しめるシリーズだ。 (時代劇コラムニスト・ペリー荻野)  ■笹沢左保(ささざわ・さほ) 1930年11月15日~2002年10月21日、71歳没。東京都出身。60年、初長篇『招かれざる客』で本格的に小説家デビュー。筆名の左保は、夫人の名前、佐保

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(2020/11/18)