“心の声”たちと「自由」を謳歌する桃子さん 映画「おらおらでひとりいぐも」(夕刊フジ)

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 【エンタなう】  芥川賞・文藝賞をダブル受賞した若竹千佐子のベストセラー小説を、「横道世之介」「モリのいる場所」の沖田修一監督が映画化した「おらおらでひとりいぐも」(公開中)。田中裕子が実年齢より10歳も年上の75歳の女性をかわいく、たくましく演じている。  主人公の桃子は、親の決めた見合い相手から逃げるように、岩手県から上京して、好きな人と出会い、昭和・平成・令和を生き抜いてきた。  いまは夫に先立たれ、子らは独立、一軒家で独り暮らしの身。孤独をまぎらわすように、“心の声”の寂しさたち(濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎)と慰めあっている。「自分は認知症ではないか」と掛かりつけの若い医者に相談しても、「そういうのは国立(病院)行って」とあしらわれるばかりだった。  日本人の6人に1人といわれる独居老人の悲哀が描かれるかと思いきや、意外にも桃子さんは「自由」を謳歌していた。図書館で借りた本にのめりこみ、地球が誕生してから46億年の歩みに想いを馳せ、ノートを綴るうちに、生きる意味がぼんやり浮かぶ。腰痛と闘いながら朝はしっかり目玉焼きをつくって朝食をとる桃子さん。じりじりと鳴るフライパンにも生命が宿るようだ。  若き日の桃子を蒼井優、夫の周造を東出昌大が演じ、「本当に幸せな結婚生活だったか」を問いただす心の声たちとのやりとりも軽妙でありながら、じーんと心にしみる。人物の描き方に温もりがある。(中本裕己)

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(2020/11/18)