高熱で脳が沸騰しガラス化、窯焼きも、ベスビオ火山災害の死因【古代都市、謎の魅力】(ナショナル ジオグラフィック日本版)

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 西暦79年の夏、ベスビオ火山から噴出した高温の火山灰と火山ガスは時速80kmの猛スピードで山肌を流れ下った。この現象は火砕流と呼ばれることが多いが、ヘルクラネウムを襲ったような火山ガスの比率が高いものは火砕サージと呼ばれている。  2018年、フェデリコ二世ナポリ大学病院の古生物学者ピエル・パオロ・ペトローネ氏らは、犠牲者の体内で液体が蒸発していたという論文を発表した。骨にこびりついた赤黒い残留物が、体内の組織が蒸発してできた赤血球の残骸であるというのがその根拠だ。また同時に、脳内の液体が沸騰して頭骨を爆発させたとも主張した。  一方で、こうした主張に疑問を投げかける専門家もいた。遺体を火葬するときには、もっと高温で焼いても、蒸発することはないという。  そこでペトローネ氏らが、1960年代に発見された1人の犠牲者を詳しく調べてみると、ひび割れた頭骨の中からガラス質の物質が見つかった。ベスビオ火山の噴火自体でガラス質の物質は生じず、これは意外な発見だった。  頭骨の中のガラス質には、脳組織によく見られる物質が含まれていた。こうした物質を作り出すようなほかの生物は、近くには見当たらない。そのため、ペトローネ氏は、脳組織が一気に加熱され、液体になった直後に急冷されたことによりガラス質になり、またその結果、中に無傷の脳組織が保存されたと結論を下した。  遺体の近くの炭化した木から、温度は約520℃まで上昇したことがわかっている。これは体脂肪に火をつけ、軟組織を蒸発させ、脳組織を溶かすのに十分な高温だ。脳の物質はそれから急冷されたことになるが、そのときどんなことが起きたのかはまだわからないとペトローネ氏は言う。 「脳がガラスになるほどの高熱が発生したと考えるのは非常に面白いですが、恐ろしくもあります」と、ナショナル ジオグラフィック協会の自然人類学者ミゲル・ビラール氏は語る。とはいえ、ここで提案されたガラス化の過程はまだ十分に解明されておらず、多くの犠牲者の中で(今のところ)この人物の脳だけが特殊な運命をたどった理由はわからない。

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(2020/11/08)