「蛾の光」リャオ・チエカイ監督が映像に表現したかったこととは?(映画.com)

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 母を失い、話すことをやめた女性ダンサーは、老パントマイマーとの交流を通じて、過去と自分自身に向き合っていく――。シンガポールで映像作家として活動をするリャオ・チエカイが、時空を超えるストーリーテリングで、東洋的な死生観を盛り込みつつ、魂の表現であるダンスというテーマを紡ぐ。極端にセリフが少なく、凝視を促す映像で貫かれている。本作は東京藝術大学大学院にて制作、監督にとっては初めての全編日本で撮影した作品である。(取材・文/稲田隆紀) ――最初にどんなイメージでこの作品となったのか、おうかがいします。  リャオ・チエカイ(以下、リャオ監督):この作品は、私にとってはとりわけ特別なものです。主演女優ハ・ヨンミを題材にした作品をまず意図しました。ふたりで青森の下北半島を旅して、構想を練り、ダンスシーンの表現方法についてカメラを回しながら考えました。その素材は、本作のフッテージに使われています。 ――そこから作品はスタートしたのですね。  リャオ監督:ふたりのダンサーのやりとりを核にしたストーリーを考えました。以前から、ドイツの詩人ライナー・マリア・リルケの書いた「若き詩人への手紙」が好きで、それを翻案したような映画を作りたかったのです。ハ・ヨンミは、純粋にダンスの創作に取り組み、生涯を賭けて自分を表現しようとしている。自己表現を追求する人の魅力が、作品の軸になりました。 ――題名に“蛾”とありますが。なぜ“蛾”なのですか。  リャオ監督:アメリカで映画の勉強をしていたときに観た、実験映画作家スタン・ブラッケージの「Mothlight」のイメージがありました。蛾を解体したものをフィルムに張り付けて、そのまま上映した作品です。ブラッケージは「Mothlight」に関するインタビューで、「すべてを映画の製作に費やすので、家族はものすごく貧しい。光に惹かれてしまう蛾と同じく、映画に惹かれてしまう結果、まわりは大変な思いをしなければいけない」と語っていました。この映画ではそうしたアーティストの内面をテーマにしています。パフォーマンスを追求するために、困難と向き合う純粋な気持ちや葛藤などの、心の在り様です。 ――時制が交錯する脚本をどのように作っていきましたか。  リャオ監督:下北半島の旅の後、私とハ・ヨンミは神奈川県の大磯で2週間を過ごし、ストーリーと脚本、チーム構

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(2020/11/08)