お金はなんとかなる──広田雅将の時計コラム(GQ JAPAN)

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2020年の上期、時計関係者の話題はコロナ禍一色だった。どうすれば売り上げを落とさずに済むのか、コロナ禍が終わったら市場はどう変わるのか、オンラインセールスをどう広げればいいのか。 2008年のリーマンショック以降、いわゆる高級時計メーカーは、この世の春を謳歌していた。多少の波はあるものの、中国市場は堅調で、インバウンドの需要も大きい。500ドル以下の価格帯はスマートウォッチが急速に伸びているものの、高価格帯にその足音はまだまだ遠いものだった。また、ラグジュアリースポーツウォッチという鉱脈を見出したメーカーは、停滞していた成熟市場のてこ入れにも成功したのである。 しかし、2020年の上半期、こういった状況は一変した。新型コロナウイルスの流行の広まりにより、市場はまったく止まってしまったのである。スイス時計協会(FH)は7月に、スイス時計業界の今年1月から6月までの輸出高を発表した。その総額はたったの68億6950万スイスフラン(約7968.6億円/1スイスフラン=116円で換算)。前年比で35.7%の大幅減という、かつてない落ち込みにとなったのである。 実際の雰囲気はもっと深刻だ。いくつかのメーカーは大規模なリストラに取り組むようになり、小メーカーの多くは、資金繰りに苦しむようになった。いちばん問題なのは、時計の見本市であるバーゼルワールドが延期、最終的には中止になったことだった。小メーカーは、見本市に足を運ぶリテーラーやジャーナリストに新製品をお披露目する機会を失ったのである。新製品の受注が取れなければ、たちまち運転資金は枯渇する。 部品と職人の流れが止まったことも、価格帯を問わずメーカーには大きな打撃となった。せっかく注文を集めても、部品がなく、人を集められないため時計を作れないのである。スイス時計の聖地と言われるジュウ渓谷には、数多くの時計メーカーが軒を連ねている。この地域で時計産業が栄えた理由は、フランスからの越境労働者を当てにできたためだ。しかし、スイスが国境を閉ざした結果、この地域にあるメーカーは、時計を作りたくても、職人たちを集められない状況に追い込まれたのである。 にもかかわらず、時計関係者の一部は未来に対して楽観的だ。というのも、お金の使い道がなくなった時計好きたちが、時計を買うようになったのである。そもそも時計愛好家、別の言い方をすると

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(2020/11/07)