ノーベル文学賞で「詩」復権? 日本の文芸出版「盲点」も露呈(産経新聞)

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 今年のノーベル文学賞に米の女性詩人、ルイーズ・グリュックさん(77)が選ばれたことが、日本の文芸書出版の盲点を改めて浮き彫りにしている。グリュックさんは米国内で権威ある文学賞を受けてきたベテラン詩人だが、単著の邦訳はなく日本ではほぼ無名の存在だったからだ。古代ギリシャ以来の長い伝統を誇る詩は西洋諸国では今でも文学の王道だが、翻訳出版には厚くて高い壁が立ちはだかる。(文化部 海老沢類) ■書店には“有力候補”がずらり  「集められるものを集めて売り場を作りました。受賞者の作品を並べるのが理想だったのですが…」  そう漏らすのは六本木蔦屋書店(東京都港区)の文芸書担当書だ。同店は今月2日から20日まで「ノーベル文学賞のゆくえ」と題したフェアを企画。8日の文学賞発表後は受賞作家の邦訳書を中心にした売り場づくりを想定していた。ところが受賞者のグリュックさんの作品は、アメリカ現代詩の選集や雑誌にごく一部が邦訳されているだけ。結果、〈有力候補とされていた、他の作家の作品をご紹介します〉という文言を掲げ、賞を逃した村上春樹さんやカナダの女性作家、マーガレット・アトウッドさんらの本を並べる苦肉の策をとらざるを得なかった。  受賞決定を受け、雑誌「現代詩手帖」を発行する思潮社(東京)はグリュックさんの選詩集の邦訳出版に向けた準備を始めた。 ■実体験を「普遍」に  日本でこそ知名度は低いが、グリュックさんは半世紀を超す創作歴があり米の文壇での評価は高い。10代から患った拒食症や離婚といった自伝的な素材をもとに内面の孤独や失望を見つめた詩が多く、『ワイルド・アイリス』(1992年)でピュリツァー賞を受賞。『忠実で高潔な夜』(2014年)は米国を代表する全米図書賞にも輝いた。芸術分野での活躍が認められ、16年にはオバマ前大統領から表彰を受けている。  「故郷へ帰還したときの心情を古代ギリシャの叙事詩『オデュッセイア』に重ねたり…と神話に託して語ることで、自分だけの経験を普遍的なものへと巧みに昇華させる。そぎ落とした言葉で語る点で(米で最高の女性詩人といわれた)エミリー・ディキンスンに連なる存在といえる」。上智大の飯野友幸教授(アメリカ文学)はそう指摘した上で、「どの詩も英語は平明だが内容は深い。もっと広く翻訳紹介されていい」と話す。 ■詩は翻訳で失われる?!  紹介が進

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(2020/10/31)