『鬼滅の刃』が日本人の心を揺さぶり、歴史的ヒットを続ける隠された理由(ダイヤモンド・オンライン)

【リンク先抜粋】
 といっても、彼らは生まれついての鬼というわけではなく、もともとは人間で、鬼舞辻無惨という1人の鬼の血を飲んだことで鬼に変わるのだ。そんな原初の鬼・無惨を倒すため、主人公・竈門炭次郎が属する政府非公認の組織「鬼殺隊」が、人食い鬼たちと壮絶な戦いを繰り広げる、という物語である。 ● 明治・大正時代の「人食い鬼」を 悲しい存在として描いたリアリティ  個人的には、このストーリーの鍵を握る「鬼」が、作品で描かれた時代に実在した「人食い鬼」たちと同様に「悲しい生き物」であるということが、しっかりと描かれていることが大きいと考えている。つまり、「リアリティのある鬼」が作品に深みを与え、それが幅広い層の心を鷲掴みにしているのではないか。  と言うと、「頭、大丈夫? 人食い鬼が実在したなんて、マンガと現実の区別がつかなくなっているんじゃないの?」と心配してくださる人もいるだろう。しかし、実は歴史的な事実として、明治末期から大正時代にかけ、日本は「人を喰らう鬼の時代」だったのである。  実際に「鬼」が起こした凄惨な事件は、時にマスコミで大きく報じられ、社会を震撼させていた。たとえば、明治25年(1892年)に「赤児の黒焼を喰んとせし人鬼」(読売新聞1892年8月22日)という事件があった。  三重県のある村の寄り合いで、「肺病には人間の黒焼きが一番だ」(同紙)という噂が広まり、それを真に受けた者たちが肺病に苦しむ仲間を助けるために、「貧しくてこれ以上育てられない」という母親から赤子を受け取って、蛮行に及んだというのだ。  そう聞くと、閉鎖された村社会の無知が引き起こした異常なカニバリズム事件のように思うかもしれないが、そうではない。『鬼滅の刃』の鬼たちが人を食うことで、強い生命力や怪しげな術を身につけるように、この時代には人の肉を食うことで、精気がみなぎって病が治ると信じる人たちが存在していた。そして、それが時に事件として表面化すると、「人を食う鬼」として報じられていたのである。

続きはこちら

(2020/10/29)