タブレット純、ムード歌謡に恋して その素晴らしさをマニアだけの宝物にしたくない(夕刊フジ)

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 「いつか声優さんとかナレーションのお仕事が来たらうれしいな、と秘かに思っているんです」。そう話す声はどこまでもか細く、そしてはかない…。  ◆日本でただ一人  しかし、ひとたびマイクを持てば、ズシンと腹に響くバリトンで、ムード歌謡を朗々と歌い上げる。そんなギャップが強烈な印象を与えるタブレット純。かつて「和田弘とマヒナスターズ」に在籍していた正真正銘のムードコーラス歌手にして、日本でただ一人の「ムード歌謡漫談家」だ。  昭和歌謡を愛するオールドファンの熱い支持を得る一方、高田文夫や徳光和夫ら業界内にも多くのファンを持つ。  そんな“タブ純”が、興味深い新刊を上梓した。『タブレット純のムードコーラス聖地純礼』(山中企画刊)。音楽の一ジャンルであるムードコーラスを文化として捉え、その歴史と概要を1冊の本にまとめ上げた。  ムードコーラス華やかなりし頃のナイトクラブやキャバレーの遺構を訪ねては残り香を嗅ぎ、往時を知る人物からは、当人も忘れかけている記憶を誘導尋問で無理やり引っ張り出すという力技。  鶴岡雅義(東京ロマンチカ)、松平直樹(マヒナスターズ)、棚橋静雄(ロス・インディオス)、敏いとう(ハッピー&ブルー)ら、昭和の歌謡界を彩った重鎮たちに、おっかなびっくりのインタビュー。発言者の記憶が曖昧なところは、持ち前の豊富な知識で補強している。  「僕がマヒナに入った頃、すでにムードコーラスは懐メロの扱いでした。今ではオリジナルメンバーで構成されるグループはほぼありません。だからこそ、その史実を形にして残したかった。20年来の夢だったんです」  わずかに残された資料から、モーツァルトやベートーヴェンの生涯や作品の背景を探る音楽学者は世界中にあまたいるが、ムードコーラスの足跡をここまで詳細にまとめた者はいない。100年後、200年後の音楽学者にとって、この労作は貴重な記録となるはずだ。  しかも、そんな学術的価値を持たせながら、自虐的な視点の軽妙な筆致は、読む者を赤紫色のネオン揺らめく“タブ純ワールド”に引きずり込む。  ◆「マヒナ」が原点  「ムードコーラスって、リードボーカルだけが大きく映って、後ろのコーラスは目立たない。でも僕は“後列の人”が気になって、名前や経歴を調べてしまうんです。音楽そのものの素晴らしさもさることながら、僕の興味は本質から周

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(2020/10/29)