公開中『星の子』でますます冴えわたる大森立嗣の演出術。その“捉えにくさ”を捉える【宇野維正の「映画のことは監督に訊け」】(MOVIE WALKER PRESS)

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具体的な監督名を何人か思い浮かべてみてもわかるように、予算的にも環境的にも作品の撮影に数週間から長くても2、3か月程度しかかけることができない現在の日本映画界において、監督の創作ペースは「その監督が周囲からどれだけ求められているか」、あるいは「監督自身の創作意欲がどれだけ高まっているか」を示す大きな指標となります。2018年の『日日是好日』の大ヒットに続いて、2019年は2本の新作が公開、コロナ禍の2020年も7月公開の『MOTHER マザー』に続いて矢継ぎ早に『星の子』が現在公開中。監督としてのデビューから15年を経て、まずはその創作ペースだけとってみても、現在の大森立嗣監督は一つのピーク期にあると言ってもいいでしょう。 【写真を見る】松田龍平と瑛太がゆる~いコンビネーションを発揮した『まほろ駅前多田便利軒』 でも、大森監督はそんな前のめりなこちらの姿勢をスルリとかわしてみせます。作品がヒットしても別に新しいオファーはこないし、2020年は最初から休むつもりだったし、別にここ数年もこれまでとは変わらない、と。そんな「つれなさ」は、あるいはその作風にも通じていると言ってもいいかもしれません。『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(10)の松田翔太や高良健吾や安藤サクラ、「まほろ駅前」シリーズの瑛太や松田龍平、『さよなら渓谷』(13)の真木よう子、『セトウツミ』(16)の池松壮亮や菅田将暉、『日日是好日』(18)の樹木希林や黒木華や多部未華子、『MOTHER マザー』の長澤まさみ、そして『星の子』の芦田愛菜。大森作品は常にそんな役者たちの忘れがたい「新境地」や「別の顔」を引き出しながらも、そこで監督の作家性を指摘しようとすると足元を掬われるような天邪鬼なところがありました。 今回のロングインタビューは、そんな大森監督のこれまでつかみどころのなかった作家性を、なんとか浮き彫りにしようという試みです。そこでのそのひとまずの結論は、まさかの“いいかげんさ”となりましたが、実は現在の日本で映画を撮り続ける上でその“いいかげんさ”は、とても重要な美徳なのかもしれません。 宇野維正(以下、宇野)「最新作『星の子』がとてもすばらしくて、その話も追ってさせていただきたいんですけれど、まずは大森監督の過去作について振り返っていきたいと思っています。最新のトピックとしては、『日日是好日

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(2020/10/29)