原美術館の最後の展覧会は1月まで 今井智己の「視覚の冒険」(CREA WEB)

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「光─呼吸 時をすくう5人」  写真家・今井智己の風景写真は、いつだってとことんさりげない。何ら特別なところのない街角や森の中の光景が、ただひたすら精細に写し撮られているだけのように見えます。 【写真3枚】この秋の美術展紹介  地名やニュース的価値など、言葉で説明できることなんて写すつもりはないのだ。それよりも、見慣れた街角に潜む形態の面白さ、森の中の微細な緑色のグラデーション……。そうした、純粋に視覚的な驚きや歓びだけを追究しているのだ! そう言わんばかり。  「見る人」に徹する潔い態度が、作品の純粋性をいっそう高めます。  ただし今井の凄みは、必要とあらば言葉や意味も躊躇なく取り入れて、作品の力にしてしまうところ。  例を挙げると右に掲げた作品は、2012年から継続して撮られている『Semicircle Law』シリーズ。福島第一原発から30キロ圏内の高台にカメラを置き、そこから原発建屋の方角を撮影しています。  もちろんそんな離れた場所から、建屋など見えやしません。写っているのはこんもりとした深い森だけ。  けれど、ひとたび「原発にカメラを向けている」と知ってしまえば、観る側の私たちは何気ない森の光景の中に、特別な何かを感じ取ることとなるでしょう。  急に不穏な空気を感じたり、ひょっとすると「放射能が見える!」という向きだってあるかもしれません。逆に青々とした自然の広がりが、いっそう愛おしく感じられてきたという人もいそうですね。  ともあれ何かを知ることは、人に後戻りのできない変容をもたらしてしまう。知ったが最後、ただひたすら「ああ、深い緑色だ……」などと観ることに徹していられないのです。  視覚や知覚を総動員して揺さぶりをかけてくる今井作品が観られるのは、原美術館での『光-呼吸 時をすくう5人』。今展を最後に同館は拠点を群馬に移します。  戦前に建てられた邸宅を転用するかたちで、1979年に東京・北品川の地で開館。以来40年余、時代ごとに最先端の現代アートが紹介され続けてきました。建物の老朽化など止むを得ぬ事情があるとはいえ、何とも寂しい限りです。  出品作はもとより、原美術館の優美な姿、さらにはそこに漂う心地いい空気を含めた丸ごとを、ぜひ記憶に留めておきたいところです。  「光─呼吸 時をすくう5人」 今井智己の他、城戸保、佐藤

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(2020/10/27)