色覚はなぜ、どのように進化してきたのか(ナショナル ジオグラフィック日本版)
【リンク先抜粋】
『「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚」言論』(筑摩書房)を上梓した川端裕人氏が、脊椎動物の色覚の進化を研究する河村正二東京大学大学院教授に聞いたシリーズの第1回──。
ギャラリー:太平洋「色の見えない人々の島」13点
ふだんの生活で、ぼくたちは日々、目を通したいわゆる視覚情報に晒されている。
もちろん、耳や鼻や皮膚などにある様々なセンサーを通しても、環境を認識しているわけだけれど、その中でも、目からの情報は膨大で、圧倒的に思える。活字を読むのも、ネットを見るのも、主に視覚情報を通じてだ。
そして、ぼくたちの視覚には「色」がある。赤だとか緑だとか青だとかを区別できるというのは、ただ明るい暗い(明暗)だけを識別するよりも、便利なことが多いし、しばしば、「美」を感じるきっかけにもなる。情緒的な言い方にすぎるかもしれないが、色覚があるからこそ、世界は彩りにあふれて、美しい。
実は色覚について、強い関心を持ってきた。小説の中でも、特異な視覚を持った一族を登場させたことがある(『天空の約束』と『雲の王』)。もっと知識を深めたいと思っていたところ、東京大学の柏の葉キャンパスに、色覚をめぐって幅広く、かつ、深く追究している研究室があると知った。大学院新領域創成科学研究科・先端生命科学専攻(さらに細かくというと人類進化システム分野)の河村正二教授が推進役になり、「魚類から霊長類」まで進化史を貫くような研究成果をつぎつぎと発表しているとか。ぜひ訪ねてみたい!
東大・柏の葉キャンパスは、東京から見ると「つくば市の手前」、千葉県柏市にある。この連載では、バイオロギングでペンギンの研究を手掛ける塩見こずえさん(大気海洋研究所(当時))を訪ねたことがある。同じ敷地には、宇宙論研究の小松英一郎さんが上席研究員を兼務するカブリ数物連携宇宙研究機構や、先日、「ニュートリノ振動の発見」でノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章さんの宇宙線研究所もあって、つまり、宇宙から生物まで学際的な雰囲気に満ちたキャンパスだ。
「生命棟」にある研究室にたどり着くと、河村教授は、みずから説明用のスライドを整えて待っていてくださった。スライドの数、100枚以上。色覚をめぐる最新研究の「旅」は、この時点でも、長く発見に満ちたものになると予感した。
それはどういう「旅」になるのか。河村