モモはなぜ人の話をいつまでも聞けたのか(NHKテキストビュー)

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モモを相手に話をしていると解決策が浮かんでくる――そんな類い希なる才能で「みんなにとって、なくてはならない存在」になったモモ。なぜモモはそのように人の話を聞くことができたのでしょうか。京都大学教授、臨床心理学者の河合俊雄(かわい・としお)さんに伺いました。 * * * 人に話を聞いてもらうことで悩みが小さくなる。多くの人に似たような経験があるのではないでしょうか。飲み屋の主人に愚痴を聞いてもらったら気持ちが軽くなったというのはよくある話ですし、自分の中で悩みを深め、身体症状を伴うようになった患者も、カウンセラーが時間をかけて話を聞くことで気持ちが落ち着き、解決の糸口を見出せることがあります。 では、なぜ人に話を聞いてもらうと気持ちが楽になるのでしょうか。 私は、それが相手に何かを託すことができる行為だからだと思います。日常生活において、人に何かを託すことは意外と難しいものです。こちらが真剣に話しても相手が受け取ってくれなかったり、話を逸(そ)らされたりします。 相手の話を受け取るというのは、実はなかなかしんどいことです。ですから、聞き手はちょっと違う話をしたり、「こうしたらいいんじゃない?」とすぐにアドバイスをしたりして話を逸らします。あげくのはてには「自分の若い頃は」と自分の話になります。しかしこれでは、話す側としては、本当に大事なところは受け取ってもらえていないと感じるでしょう。 裏を返していえば、そこを託せたと思えるだけで人はだいぶ楽になるのです。心理療法の現場では、これが何をおいても第一歩になります。次の段階として、相手に託せたことで何かが自分に返ってくる、自分の中に変化が起こることを目指すのです。 人の話を聞くなんてたいした能力ではないと思うかもしれませんが、聞き続けることは実は非常に難しいことです。というのも、人はついついアドバイスしたり、相手のいうことを否定したりしたくなってしまうからです。 ある研究調査で、訓練を受けたカウンセラーと学校の先生に対し、クライエントが同じ悩みを相談しました。すると、学校の先生は聞いている途中から相談に応えようと、自分の考えを次々にクライエントに提案しました。「そんなことないよ」「次はこうしてみたらどうかな」という具合です。善意からいったことですが、これではク

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(2020/10/20)