新しいポジションを目指したユニークなGT(中編)──イタリアを巡る物語 vol.9(GQ JAPAN)

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マセラティが先日発表したミドマウント・エンジンのスポーツカーであるMC20の受注が開始され、日本においてもたいへん好調な出だしであるという。マセラティにとって日本はとても重要なマーケットだから、彼らも大いに喜んでいるはずだ。ギブリ、ボーラと言った大型GT時代はごく限られた台数しか輸入されることはなかったが、デ・トマソによるコンパクトな“ビトゥルボ”が誕生すると、日本は一気に大きなマーケットとなった。 とりわけ1990年代初頭は、日本が世界で最もたくさんマセラティを売る国となったのだ。スーパーカーブーム時代のマセラティ・ブランドの名前が刷り込まれていたこともあり、このバブル期に登場したビトゥルボ・モデルがヒットしたことにより、日本におけるマセラティの存在感は、思いのほか高いものになった。 ビトゥルボ系のモデルは外観こそ比較的おとなしかったが、中身はけっこう硬派なクルマぞろいだった。ドライブフィールはかなり荒々しく、エグゾーストノートも野太かった。エンジンマウントなども快適性に向けたチューニングがされてはいなかったから、アイドリング時から結構なバイブレーションがあり、助手席に乗せた人からは、「このクルマ、ディーゼルなんですか? 」なんて言われたこともあったほどだ。 さて、この辺で本題のボーラについていえば、30年以上、ボーラとビトゥルボ系のモデル、および時々の最新マセラティを保有し続けた人間(=著者)に言わせるなら、それは恐ろしく洗練されたスポーツカーなのである。断言できる。乗り心地、遮音性や使い勝手などが充分に考慮された、まごうことなきグラントゥーリスモなのだ。ビトゥルボ系と比較してもボーラの方が運転におけるストレスが少なかったくらいだ。であるから、スーパーカーブームの頃に比較されたランボルギーニ カウンタックやフェラーリBB系などとは全く性質を異にしたモデルといえる。 ボーラのステアリングを握ると、ペダルレイアウトは全く無理がなく、コクピット全体が広々としていることを第1に感じるはずだ。LHMオイルを用いた油圧式のパワー・ステアリングを備え、ペダルの前後調整もシートアングル調整もワンタッチでできるので、理想的なドライビング・ポジションを得られる。もちろん、ステアリングの角度及び前後の位置決めもアジャストできる。分厚いドアを閉めてみよう。すると、この時代のスー

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(2020/10/18)