「個別対応が重要」「合理的な賃金体系整備を」 待遇格差訴訟で識者ら(産経新聞)
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非正規労働者への賞与と退職金の不払いについて、最高裁が13日、「不合理ではない」との判断を示したことに対し、専門家からは「個別対応がより重要になる」といった意見のほか、会社側に合理的な賃金体系の整備の必要性を求める声が聞かれた。
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同志社大法学部の土田道夫教授(労働法)の話「大阪医科大の訴訟では、正社員とアルバイト職員との間に職務の内容などで明確な差があり、最高裁の判断は妥当といえる。ただ、メトロコマースの訴訟においては、契約社員と正社員の職務内容の差は比較的小さく、契約社員の勤務期間も長いため、退職金相当額の損害賠償を全く認めなかったことは、労働契約法20条の趣旨からみて疑問が残る。多くの企業や団体では正社員の定着・確保を目的に賞与や退職金を支給しており、同種の訴訟で今後、非正規側が勝訴するハードルは高くなったといえる」
大槻経営労務管理事務所代表社員で社会保険労務士の大槻智之氏の話「判決自体は妥当な内容で、企業の人事・労務担当者はほっとしただろう。ただ、この判決を受けてアルバイトといった属性だけで『賞与や退職金は不要』などと待遇を一くくりで決めてしまうと間違いを犯す。非正規でも正社員と肩を並べる働きをしている大ベテランの社員だったら今回のような判決にはなっていない可能性があり、個別の事情に応じてきちんと対応することが重要だ。昔は生活補助的な位置付けだった非正規は、今では一家の生活を支える大黒柱的なポジションの人も多い。今回の判決で『非正規の賃金格差はOK』という世論形成ができてしまうことは非常に危険である。企業側は勘違いせず、非正規の職務内容をよりきめ細かく把握して待遇を決めていく必要があるだろう」
労働法に詳しい河津博史弁護士の話「今回の最高裁の両判決は、賞与や退職金の制度を含む人事施策について会社側の裁量を広く認めたため、高裁とは判断が分かれたのだろう。一方で、どのような事案でも賞与や退職金を支払わないことを是認したものではなく『不合理と認められることはあり得る』と指摘している。会社側には、紛争予防の観点からも、合理的な賃金体系を整備することが求められる」