『ロケットマン』では描かれなかった、エルトン・ジョンの暗部。【ポップスターの回顧録vol.1】(VOGUE JAPAN)
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「音楽は国境を超える」と昔から言われてきたが、その言葉を体現するのが世界中で愛されるポップスターたちだ。国境はもとより、時代をも超越して愛され続ける彼らの多くは、波乱万丈の人生を歩んできた。そんな紆余曲折の道のりを綴ったミュージシャンたちの回顧録を紹介しよう。
昨年、伝記映画『ロケットマン』が公開されたエルトン・ジョン。ポップスターの光と影を描いた作品は大反響を呼んだが、同年10月に彼が発表した『Me エルトン・ジョン自伝』は「初にして唯一」と銘打つだけあって、映画が大人しく思えるほど、栄光の裏に隠された暗部に踏み込んだ赤裸々な内容だ。
ロンドン郊外で生まれ育った幼少期から2018年にスタートしたフェアウェル・ツアーまでを振り返った本書では、70年代から世界的人気を誇りながらもうつ病と自殺未遂を繰り返した過去、うまくいかなかった恋愛、ドラッグ中毒、前立腺がんと診断されたことなど、包み隠さずに晒け出す。読者の同情を誘うのではなく、ちょっと捻ったユーモアのある語り口で、悲劇もどこかファニーな逸話に昇華させる。だからこそ、成功の真っ只中にいながら、自信喪失と自己嫌悪に苦しむスターの孤独がより強く伝わり、心を動かされる。
長年ともに名曲を作り続けてきた仕事上のパートナーである作詞家のバーニー・トービン、恋人でもあった元マネージャーのジョン・リードとの関係も詳しく綴り、さらにジョン・レノン、デヴィッド・ボウイ、フレディ・マーキュリーやジョージ・マイケル、ダイアナ妃など多くのセレブたちとの知られざる仰天エピソードが次々と飛び出し、彼らについての愛ある毒舌人物評も興味深い。
自身のキャリアについて、「父親に自分がどういう風に形成されたかを見せるためだった」と分析するエルトン。1990年代から「エルトン・ジョン エイズ基金」を設立し、エイズ患者救済やエイズ予防のための活動に心血を注ぐ理由、ドラッグ中毒を克服し、パートナーのデヴィッド・ファーニッシュと出会い、2人の息子の父親になり、ポジティブに転じた後半生についても記している。ちなみに同書のオーディオブックは、『ロケットマン』でエルトンを演じたタロン・エガートンが朗読を担当した。