横山光輝のヤンキーマンガ? 番長連合との闘いを描く異色作『あばれ天童』(夕刊フジ)

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 【マンガ探偵局がゆく】  今回は「マンガ界のエンターテイナー」と呼ばれた横山光輝に関する依頼だ。  「ステイホーム中に『三国志』を全巻読破して横山光輝さんのファンになりました。その後も『鉄人28号』や『伊賀の影丸』『バビル2世』など片っ端から読んでいますが、ヤンキーマンガも描いているという話を耳にしました。どんなマンガなのでしょうか? 読みたいので教えてください」(40歳・元ヤンキー)  「ヤンキーマンガ」と呼んでいいのかは微妙だが、依頼人が探しているのは『バビル2世』完結後の1973年から76年まで、「週刊少年チャンピオン」に連載された学園マンガ『あばれ天童』だろう。当時は「番長マンガ」と紹介されたこともあった。  若葉学園に転校してきた山城天童はスポーツ万能。空手部では主将以下全員を一瞬にして倒し、鉄棒をやればウルトラCの連発。さらに、その器の大きさと度胸には本物のヤクザも一目置くほど。  そんな天童の存在を快く思わないのが、不良学生たちを束ねる番長連合だった。無益な争いを望まない天童は、なんとか衝突を回避しようとしたが、番長連合は四天王を送って天童に迫った。  天童を慕う黒住工業高校の番長・石倉は、番長連合を抜け、全国に手紙を送って、天童のためなら命も惜しまない仲間を呼び集めた。やってきたのは巨漢の頑鉄、忍者のように身軽なキザ男、バイク乗りのハヤテ…。  横山光輝は、同テーマの作品を続けて描かないタイプのマンガ家だった。『鉄人28号』が完結したのち掲載誌「少年」ではカーレースの世界を描く『グランプリ野郎』を連載しているし、『あばれ天童』に続いてはSFの人気作『マーズ』が始まっている。  秋田書店の単行本のまえがきには「連載をはじめるとき、自分の新しい分野を作ってみようという気持ちと、はたしてうまくかけるかという不安がいりまじった」とある。  おもしろいのは、スポーツ万能の天童が野球をやったことがない、という設定だ。バッティングやピッチングはできても、守備のときは武道の癖が出てボールを避けるからエラーを連発するのだ。考え過ぎかもしれないが、同じ雑誌のヒット作だった水島新司の野球マンガ『ドカベン』への配慮を感じる。横山は気遣いの人でもあった。  紙の単行本は品切れだが、電子コミックでなら読むことができる。  ■中野晴行(なかの・はるゆき) 

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(2020/10/12)