ドイツの岐路(下)冷戦の亡霊 核の議論再び(産経新聞)

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 「ドイツの核兵器」をめぐって今春、メルケル政権は決断を迫られた。「米国との核協力をどうするか」という問題だ。  ドイツは、北大西洋条約機構(NATO)の「核共有」概念により、米国の核兵器を受け入れている。「核拡散防止条約」(NPT)に非核保有国として加わりながら、NATOの核抑止の一翼を担う。  核兵器は米軍基地ではなく、ドイツ連邦軍基地に配備される。「いざ使用」のときには独軍機が核兵器を運び、標的に投下せねばならない。米科学者連盟によると、フランス国境に近いビューヘル独空軍基地に20発の核爆弾があるとされる。  ドイツ統一後の30年間、有力政党は極力、この話題を避けてきた。ところが、投下を担う独攻撃機の老朽化で、政府は2030年代には後継機を調達せねばならなくなった。  中道左派の与党、社会民主党(SPD)のミューゼニヒ連邦議員団長は、この機をとらえ「核兵器は東西冷戦の遺物。トランプ米政権はすべて一方的に決める。こちらも協力を見直せ」とタブーに火をつけた。  左派には元来「核兵器撤去」論が強く、ミューゼニヒ氏は国民の「トランプ嫌い」を追い風にしようとした。トランプ大統領に対するドイツ人の不信は強烈で、世論調査で「再選は米独関係にマイナス」と答えた人は82%にのぼった。  技術的問題も浮上した。メルケル政権は「欧州の軍事産業強化」を掲げ、核兵器搭載可能な戦闘機をフランスと共同開発している。だが、運用は40年以降で、切り替えに間に合わない。  迷った末、クランプカレンバウアー国防相が決めたのは、「米欧折衷案」だった。今年4月、欧州製のユーロファイター93機、米ボーイング社のF18を45機あわせて購入する計画を発表した。「F18は『つなぎ措置』。連邦軍の屋台骨はユーロファイターが担う」と述べた。オランダなど他のNATO核協力国は最新鋭の米F35戦闘機を選んだが、ドイツはあえて見送った。ただ、ユーロファイターを核協力に使うには米国の承認が必要だ。  ドイツをさらに悩ませたのは、フランスのマクロン大統領が2月に提案した「欧州共通の核」構想だ。  フランスは欧州連合(EU)唯一の核保有国で、約300発の核弾頭を持つ。マクロン氏は「いつまでも米国に甘えられない」と言い、自国の核兵器を欧州の抑止力に使おうと訴えた。本音は「ドイツも維持費を負担して」ということだ

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(2020/10/11)