『スパイの妻』黒沢清監督に聞く “決定的瞬間”を映したスパイ物語(CREA WEB)

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――監督が本作への正式なオファーを受けた時点で、既に共同脚本を務めた濱口さん、野原さんによる脚本の骨子ができあがっていたそうですね。初めて読んだときの率直な感想はいかがでしたか?   物語に関して言うと、聡子と優作という夫婦がいて、国に関わる機密を知ってしまった優作が、葛藤しつつ聡子を欺いたりするという流れになっています。そこまではわかるんですが、物語が進むにつれて、聡子の方も対抗するように、優作を欺いて計略にかけていく。  愛し合っている夫婦ではあるんですが、社会的な緊張をはらみつつ、お互いがほぼ対等な形で騙し合う。これは僕には書けないし、この時代を扱った日本映画では見たことがないとも思いました。  欧米、特にヨーロッパの映画ではある種のスタンダードな物語なのかもしれませんが、日本では見たことがない。そこが大変に興味深かったです。よくこれを思いついたね、と。 ――騙し合いもスリリングでしたが、その一方で2人が協力してスパイ活動を計画する際、聡子がとても楽しんでいる姿がチャーミングでした。まるでヒッチコックのサスペンス映画のヒロインのようだなと。  2人が海外で活動する資金を得るため、貴金属を購入するというシーンですね。あの設定は濱口と野原が最初から書いていたものです。  ただ、そこに聡子のウキウキしている感じというか、憲兵に見張られているという緊張感だけでなく、久しぶりに夫婦で楽しく過ごせることに対する高揚感も加えたいと思いました。  実際、あの買い物に行くとき、2人はオープンカーに乗るんですが、それを提案したのは僕です。「せっかくだからオープンカーにしようよ」って(笑)。

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(2020/10/08)