ベントレー ミュルザンヌ生産終了──ミュルザンヌと共に終わりを迎える“ベントレーのV8”(GQ JAPAN)
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とうとう今年、生産を終えることになってしまった。ミュルザンヌというベントレーのハイエンドサルーンそのもの、もさることながら、フロントに厳めしく積みこまれた60年にわたり6 3/4リッターのV8エンジンもろとも、というあたりに迎えた歴史の大きな節目を感じずにはいられない。
L410系と称されるこのV8OHVエンジンは、1950年代前半には開発が始まり、1959年になってようやく市販モデルに初めて搭載されるに至った。当時はベントレーがまだロールス・ロイスと“同居する兄弟”だった時代で、両ブランドにおける“たったひとつ”の主力エンジンとして開発されたのだった。
当初は6.23リッター。トルクをさらに稼ぐべくストロークアップで6.75リッターとされたのが1970年のこと。以来、50年もの長期にわたって改良に次ぐ改良を受けてきた。ロールス・ロイスと離ればなれになり、VWグループに入ったベントレーには引き続き搭載されたというわけだった。
ミュルザンヌのオーダーができなくなった今、ブランドのフラッグシップサルーンの座はフライングスパーへと譲られたカタチだ。もちろん、最新モデルであるフライングスパーの完成度はすこぶる高く、ハイエンドサルーンとしてどこに出しても恥ずかしくない仕上がりにはなっている。
けれども、ミュルザンヌまでの威風堂々さが備わるまでには少々時間が必要だろう。ミュルザンヌの厳かな雰囲気は、ボディサイズやスタイリングのみならず、L410という長命エンジンの存在によって醸し出されていたようにも思うからだ。
八方手を尽くしたというべき延命措置により、市販車エンジンとしては最も寿命の長い60年ものあいだ超高級ブランドの心臓役を務めてきたわけだから、ボンネットフードを開けてみればそれはもう、古城のように荘厳な佇まいを見せる。妖気すら漂う。それがオーラとなって滲み出て、ミュルザンヌというクルマを包んでいたんじゃないだろうか。