【追悼 ベイリー】笑顔の向こうに 小児病棟とセラピー犬(@S[アットエス] by 静岡新聞SBS)

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 ゆっさゆっさ。ゴールデンレトリバーの長い尻尾が揺れる。散歩の時には垂れたままなのに、病院の中だとこうなる。「今日も張り切ってるな」。セラピー(治癒)犬ベイリーの背中を見て、森田優子さん(29)=静岡市葵区=の口角が上がる。「犬には人の感情がすぐ伝わる。あなたが緊張すると言うことを聞かない。ポジティブ(前向き)でいなさい」。ハワイのセラピー犬訓練所で、トレーナーからそう言われた。確かに以心伝心なのだ。(静岡新聞2011年1月3日朝刊掲載、年齢・肩書などすべて当時の情報)  院内を歩くと、擦れ違う人がみんな笑顔になる。「今日もかわいいねぇ」。患者も医療スタッフも立ち止まる。県立こども病院(静岡市葵区)に通い始めて1年。“ファン”の間には、日に1回はベイリーに会って元気をもらう「一日一ベイリー」という合言葉まで生まれた。  2009年、森田さんは看護師として5年以上勤めた国立成育医療研究センター(東京都)を辞めた。大学の恩師から、今の勤務先のNPO法人タイラー基金(同)を紹介されたのがきっかけ。学生時代、「動物の持つ力を医療に役立てたい」と思ったが、国内で職業として携わる道はほとんど無い。ようやくそのチャンスが巡ってきた。迷いはなかった。  タイラー基金が派遣する病院常駐のセラピー犬。そのハンドラー(指導者)に抜てきされた。試用期間を経て10年1月から週3日、病院への訪問が始まった。ただ、入れるのは一部の病棟だけ。他からはめったに呼ばれない。たった1時間、病棟を回って帰宅する日が続いた。ベイリーの尻尾は垂れたまま。「私たちは必要とされてないのかな…」。病院近くの遊水地を散歩しながら、寂しさは募った。  ベイリーが尻尾を振るようになったのは、病院を囲む桜の花がほころび始めたころ。他の病棟からも予約が入るようになった。7月からは週5日の訪問に。子どもの検査や処置、リハビリに付き添うようになった。手術室への出入りも許された。  今、ベイリーの控室には“アクセサリー”がたくさんある。ビーズのネックレスやマフラーなど。全部、子どもからのプレゼントだ。森田さんはその中の幾つかを選び出して、ベイリーの首に巻き付けた。訪問する病棟ごとに着け替える。贈り主に見せるために。  看護師時代、子どもをみとるのはもちろん悲しかった。ただ、感情を引きずるわけにはいかなか

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(2020/10/03)