特産品の海に浮かぶ飛行船 土浦ツェッペリンカレー(NIKKEI STYLE)

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「そうだ、土浦へ行こう!」 コロナ禍の巣ごもり生活で、食生活もマンネリ化する中、キラリとひらめいた。 食欲がわかない時でも、カレーなら食べられるのが不思議だ。茨城県土浦市には「ツェッペリンカレー」なるものがある。北海道のスープカレー、岐阜県郡上市の奥美濃カレー、島根県海士町のサザエカレーなど、全国各地のカレー巡礼旅を続けて来たつもりだが、土浦ツェッペリンカレーには、いまだお目にかかっていない。常磐線沿線住民としてうかつだったと反省し、さっそく土浦通いを始めた。 土浦市は国内第2の湖、霞ケ浦に面する舟運、物流の要衝で、県下では水戸に次ぐ商都・城下町として栄えた歴史を持つ。隣接の阿見町と併せ、霞ケ浦海軍航空隊、予科練のまちとしても知られている。 海軍とカレーには切っても切れない縁がある。横須賀の「海軍カレー」が有名だが、大人数の料理を手軽に作れ、ビタミン、たんぱく質など栄養豊富なカレーは、かつて結核と同様、深刻な病だった「脚気(かっけ)」に効果があることが、海軍軍医・高木兼寛の手で明らかにされた。曜日感覚が薄れがちな洋上航海で、毎週金曜にカレーを食べる習慣は海軍の伝統で、今も海上自衛隊に引き継がれているようだ。 なぜ土浦で「ツェッペリンカレー」なのか。江戸時代から続く豪商の屋敷や蔵が並ぶ一角に、その答えがあった。土浦まちかど蔵「野村」の文庫蔵「土浦ツェッペリン伯号展示館」をのぞいてみると……。 展示資料には、1929年(昭和4年)、ドイツの大型飛行船「ツェッペリン伯号」(全長236.6m、乗員65人)が人類初の世界一周を成し遂げた際、最初の寄港地として8月19日夕、霞ケ浦海軍航空隊(現・陸上自衛隊霞ケ浦駐屯地の一角)に降り立った、とある。上野―土浦間に臨時列車が走り、30万人の観衆が参集。「君はツェッペリンを見たか!」は当時の流行語にもなった。地元特産のジャガイモを使ったカレーを乗務員に振る舞った逸話も紹介されている。 商家「野村」のレンガ造りの喫茶店「蔵」で食べられるのが、土浦商工会議所女性会が考案したツェッペリンカレーだ。じっくり煮込んだ地元産豚肉、野菜のカレーの海に、飛行船型のライスが浮かび、揚げレンコンと細い昆布が添えてある。ひっそりと涼しい蔵の中で食べるカレーは、胃袋に優しく、滋養分が染みわたる。 どんな経緯でツェッペリンカレーが誕生したのだろう。土

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(2020/10/03)