渋谷・リクチュール──新世代のクラフツマン、注目のテーラーと靴職人に迫る。(GQ JAPAN)
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「分解し、修繕し、そして再構築する」。これはリクチュールに込められた意味だ。洋服のお直しを生業とする母に育てられた廣瀬さんにとって、直すことは当たり前のことだった。
ジョン・ロブから女性用のパンプスまで、19歳でこの世界に飛び込んだ彼に直せない靴はない。どんな状態で修理の依頼が来ても、持ち主が大切にしてきた思い入れ深い1足を感動的な仕上がりでお返しし、その靴に新たな日常をもたらすのだ。「納得いかないと、一度剥がして振り出しに戻したりする。やりたいことはたくさんあるのに、こんなことしているから時間がなくなるんですよね(笑)」と、語る廣瀬さんの物静かな口調からは、飽くなき探究心を感じる。
スニーカーは、消耗品である。時間の経過とともに、ソールは摩耗し、加水分解することもある。リクチュールのスタイルは、駄目になったソールを一度剥がし、ビブラム社製ソールに張り替えることが基本。アッパーとのつなぎ目には一流ブランドも使用する最高級レザーを使用。コバは熟練の感覚で繊細に削りをいれ、美しい曲線を描く。
全工程手作業でカスタムされたスニーカーは、レザーシューズやブーツのような重厚感を纏い、耐久性と経年変化の楽しみを携えて羽ばたいていく。「真似をしてくれる人も増えましたが、質は写真を見ただけでわかります」。彼のシューメイクは、すでに誰にも模倣できない域に達している。
そんな類いまれなクラフツマンシップは、アディダス本社の目にとまった。廣瀬さんは昨年、Campus 80s MakerLabの3人に選出された。世界最高峰のシューズ生産技術に触れ、視界が開けたという。「今までの姿勢を大切にしつつも、より多くの人に作品を履いてもらう喜びを学びました。靴修理の概念を壊し、この業界から今までにない驚きを発信したいです」。最近はものづくりをより広い視野で捉え、建築の施工などからも学びがあるのだとか。
彼はこれからも靴と真摯に向き合い、さらなる高みを目指す。
PROFILE
廣瀬 瞬
RECOUTURE 店主
1986年生まれ、東京都出身。20代前半から靴修理をはじめ、2013年に「国分寺シューズ」をオープン。その後「RECOUTURE」へと改名。2019年、渋谷に移転し、adidasのプロジェクト「Campus 80s MakerLab」に参加。繊細なカスタム技術は世界から評価される。