貧しく苛められ嘲られてもメジャー制覇「デシャンボー」の我が道(新潮社 フォーサイト)

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「子どものころ、学校へ行くとき、ランチを買うお金を持っていくことができなかった。食べるものが何もない。そういう苦しい時期が我が家にはあった。作ることができたのは、せいぜいボローニャ・サンドイッチぐらい。それでも両親は、いつも僕にベストを尽くさせてくれた。ゴルフをする機会、練習して上手くなるチャンスを持たせてくれた」  難コースの「ウイングドフットGC」(ニューヨーク州ママロネック)が舞台となった今年の「全米オープン」を、ただ1人アンダーパーで回り切り、2位に6打差の通算6アンダーで圧勝した27歳の米国人、ブライソン・デシャンボーは、優勝会見の冒頭で両親への感謝を口にした。  ボローニャ・サンドイッチというのは、米国庶民の誰もが知っている手軽な家庭料理の1つだが、安価なボローニャ・ハムやボローニャ・ソーセージを挟んだだけの質素なサンドイッチは、経済的にも物理的にも厳しい生活を想起させるものの代名詞のように使われている。日本的な表現に言い換えれば「毎日、インスタント・ラーメンをすすっていた」という感じである。  ランチタイムに1人だけ、何も食べられずにいたデシャンボー少年は、周囲からあれこれ言われ、いじめられていたそうだ。 「実際、僕は何をするにも動きがスローで、だから周りから、なんだかんだと笑われていた。どうしたら、そういう日々から抜け出せるだろうかと考えた。みんなの真似をしようとか、みんなと同じようになりたいとは思わなかったし、同じにはならないし、なれないと思った。僕には僕なりにできること、僕にしかできないことがあるはずだと思った」  そして思いついたのは、ゴルフが誰よりも上手い子になること、そして勉強もできる子になること。ひとたび決めたら、まっしぐら。そういう性格が彼には生来、備わっていたらしい。  動作は相変わらずスローだったが、学業では群を抜く成績を出し始め、ジュニアのゴルフ大会に出れば優勝や上位入りをして評判になり始めたデシャンボー少年は、いじめられっ子から人気者に変わっていった。  考えて考えて、方法を見出し、実験や試行錯誤を重ねて答えを出す。結果を出す。デシャンボー少年が自力で辿ったそのプロセスは、すでに科学だった。  同一レングス(長さ)のアイアンのほうが効率的だという独自の答えを得たのも、学生時代だった。周囲からは小馬鹿にされ、父親か

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(2020/09/25)