天の「タケさん」も喜んだ高橋由伸の同点弾&逆転ホーム あの名場面の裏側・G戦士編(夕刊フジ)

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 【あの名場面の裏側 G戦士編】  左翼に上がった打球を見ながら高橋由伸は心の中で叫んだ。  「伸びろ!もっと伸びてくれ!」  2004年8月21日、アテネ五輪野球の予選リーグ第6戦、日本対台湾の試合でのことだ。  夏のアテネの午前中はギラつく太陽の光と熱で焼けつくような暑さ。スタンドの観客のほとんどが上半身裸で頭にタオルを乗せている。が、日本代表ナインは暑さなど忘れマウンドの台湾・王健民を凝視した。  中畑清監督代行率いる日本は宿敵キューバには勝ったものの豪州に不覚をとり、ここまで4勝1敗。予選トップ通過をめざすにはこれ以上の負けは許されない状況だった。  また、ナイター明けのデーゲームが続くなど選手たちは寝不足で疲れていた。それでも試合前にはベンチに掲げられた「背番号3」のユニホームにタッチしてグラウンドに飛び出した。それは4カ月前に脳梗塞で倒れ五輪での指揮を断念した長嶋茂雄日本代表監督の無念のユニホームだった。  由伸もなでるように触れた後、日本の方角の空に向かってつぶやいた。  「タケさん、天から応援してください」-。タケさんとは2年前の8月23日に亡くなった武上四郎巨人打撃コーチ(元ヤクルト監督)で、由伸のルーキー時代から目をかけ、こまめに面倒を見てくれた恩師だ。ちょうど日本時間のこの日、故人の3回忌法要が行われると聞いて、力がみなぎった。  試合は苦しい展開。3回表に台湾が陳金鋒の3ランで先制する。そしてヤンキースで活躍したエース王健民が150キロの速球と右打者の胸元に食い込むシュートで6回まで日本打線を散発3安打に抑え無失点の力投だ。  「やられるかもしれない。ただ、前半から飛ばしていたので後半に捕まえるチャンスがくる。それにかけるしかない」と中畑監督代行も腹をくくった。  そして7回裏だ。1死後、藤本敦士(阪神)の内野安打に福留孝介(当時中日、現阪神)の右前安打が続き1、3塁。ここで宮本慎也(ヤクルト)の一前犠打がスクイズの形となって藤本が生還。1点を返してなお2死2塁で由伸だ。1-2と追い込まれファウルで粘った5球目の速球をたたく。打球は高く上がって大きな左飛かと思われたが、グンと伸びて左翼席への2ランだ。「タケさんが打球を引っ張ってくれた」。そう思いながら由伸はダイヤモンドを回り同点のホームを踏んだ。  3-3のまま延長戦

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(2020/09/24)