揺らぐ覇権 譲れぬ米中、衝突に備えよ 簑原俊洋氏(産経新聞)

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 2020年は、世界史における大きな転換点であることは間違いない。その理由は、目下のパンデミックの発生のみならず、米国が中国との対決姿勢を鮮明にしたからである。とりわけ米国務長官、マイク・ポンペオによる7月の2つの声明は、戦後米中関係における重大な節目として捉えることができる。  ほとんどの国内メディアは、7月23日にニクソン大統領図書館で行われた国務長官演説に注視した。彼の「中国共産党の行動を変える必要がある。そのため、自由主義国家は結束して自由を擁護しなければならない」といった発言が示すように、世界を2つの陣営に分ける米中新冷戦の本格的な始まりを象徴する内容だったゆえに、関心が高かったのは無理もない。だが、本稿ではあえて書面として同月13日に発表された声明を取り上げたい。  この中でポンペオは、スプラトリー(中国名・南沙)諸島海域における中国の行動を違法であると糾弾した上で、米国は中国による海洋帝国の建設は許容できないとし、軍事力を背景にした中国政府による現状変更政策は一切承認しないと言い放ったのである。  中国は米国が主導する国際秩序の下ですくすくと育ち、経済力のみならず軍事力をも有する「大国」へと台頭した。しかし、いざ大国の地位に上り詰めると、自らの国益とより合致する新しい国際秩序を構築することこそが真の大国だという意識と野心が中国に芽生え始めた。  逆に、世界における中国の存在感が増していくと、米国は中国をライバル視するようになり、中国への要求も厳しくなる。当然、こうした態度の変容は、中国にとっては不合理または理不尽なものに映り、「二重基準」に満ちた米国の偽善的態度を看過できない一点にまで到達する。  現在のところ中国は、「パクス・アメリカーナ」にとって代わる「パクス・シニカ」の構築まではもくろんでおらず、米国の介入が及ばない自前の勢力圏の確立を目指していると考えるのが自然であろう。しかし、米国はその可能性を完全に否定した。  ならば今後はどんな展開になるのだろうか。歴史を的確にひもとけば、そこには将来を見極めるための多くのヒントが見つかる。  アジアで覇権に挑戦するのは、何も中国が初めてではない。戦前期の日本も英米主導の国際秩序に挑戦した。第一次世界大戦後の世界において、英米両国は国際協調をうたいつつも、実際は自らの国益を優先した。特に米国

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(2020/09/06)