宇宙探査機の時間と空間をめぐる冒険:「現在」をどうやって決めるか?(sorae 宇宙へのポータルサイト)

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マーズ・エクスプレスのように、探査機を運用するチームが対応しなければならないこうした問題には、物理学者アインシュタインの「特殊相対性理論」の基礎となっている「光の速さよりも速く運動できるものは存在しない」という事実が関係しています。探査機を操作するコマンドは電波を使って送られます。電波も光の一種で、周波数では約30ヘルツから約300ギガヘルツまで、波長で表現すると1ミリメートルから1万キロメートルのものまでありますが、探査機のコマンドは周波数や波長によらずおよそ秒速30万キロメートルという速さで進んでいきます。地球と火星の位置関係によって信号が火星に届くまで4分から25分ほどかかるため、行って戻ってくるまでの時間を考えると大雑把には1時間を考える必要があります。そのため、私たちが知る「火星で何が起こっているのか」という情報は火星にとっては過去のものであり、これが「今」とはいつなのか?を決めるのを難しくしています。 そうした意味で、宇宙探査機のミッションにおいてリアルタイムで起こることというのはほとんどありません。日常のルーチンとなっている運用では一連のコマンドを探査機に送信し、数日間、場合によっては数週間の間、運用を続けられるようにします。これらのコマンドでは探査機が持っている時刻である「Spacecraft Event Time」というものを使用します。Spacecraft Event Timeは探査機に搭載されているコンピューターにもとづく時刻です。しかしこれは私たちがイメージする時計とは異なり、コンピューター内の装置が独自に秒針をカチカチ動かしているようなもので、それをそのまま地球の時刻にすることはできません。そのため、探査機の運用に使うソフトウェアで人間が解釈できる時刻に変換しています。代表的なものは「協定世界時」(Universal Time Coordinates: UTC)と呼ばれるもので、これはイギリスのグリニッジ天文台を基準とした「グリニッジ標準時(平均時)」(GMT)とほぼ同じ時刻で、日本とは9時間の時差があります(なお、UTCとGMTは概念的には別のものです)。 一方で、時計は放っておくと少しずつずれていってしまう性質があります。マーズ・エクスプレスの場合は太陽との距離に応じて温度が変わり、それによって時計が速くなったり遅くなったりします。

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(2020/08/25)