世界は香港をこのまま見殺しにするのか/福島香織氏(ジャーナリスト)(ビデオニュース・ドットコム)
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中国政府が6月30日に香港を対象とする国家安全維持法を制定したことを受けて、香港では早くも言論を含む多方面で甚大な影響が出始めている。
国家安全維持法は「国家分裂」や「政権転覆」、「テロ活動」、「外国勢力と結託して国家の安全に危害を加える行為」などを罰することを定めた法律で、最高刑として終身刑までが科せられる。問題はこの法律の条文が非常に広く解釈が可能な曖昧な文言になっているため、統治権力側が言論や市民運動などの弾圧にいくらでも恣意的に利用することが可能になっていることだ。
法律施行の初日となった7月1日は、300人を超える平和的な民主化デモの参加者が逮捕され、そのうち少なくとも9人が新たに制定された国安法違反容疑だった。中にはカバンの中に「香港独立」と書かれた旗を隠し持っていただけで国安法違反に問われた人もいたという。
既に多くの出版物で自主規制が行われており、香港の独立や民主化運動に関連した著書や、中国政府や中国共産党を批判したり風刺する書籍や漫画などは一様に書店や図書館から取り除かれている状態だ。
元々香港は1997年の返還時に50年間は一国二制度の下で市民的自由が保障されることになっていたが、23年目にしてその約束が一気に反故にされた格好となっている。
中国情勢に詳しいジャーナリストの福島香織氏は、中国政府がここに来て強行策に出た背景には、昨年の香港の民主化デモの盛り上がりに対して習近平政権が対応に失敗したことのリベンジとしての意味合いと、中国の武漢に端を発する新型コロナウイルスを世界に拡散してしまったことに対する国際的な批判の高まりをかわす目的、そして新型コロナのパンデミックによって米中関係が急激に悪化し、米中貿易交渉で妥協が成立する見通しが立たなくなったことから、もはやアメリカに配慮する必要がなくなったことの3点をあげる。
そもそも香港が返還された1997年の時点で中国のGDPは米国の11%、返還交渉の相手だったイギリスの62%に過ぎなかった。それがこの20年あまりの間に中国経済は急成長を遂げ、2019年には米国の67%、イギリスの5倍にまで膨れあがった。返還時に一国二制度などという条件をのまざるを得なかったのは、中国がまだ弱かったからであり、今の中国はもはや当時のように他国に遠