「伝えることが被爆地の使命」長崎原爆資料館長の篠崎桂子さん(産経新聞)
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「原子雲の下で何が起こったのか。それを伝えるのが被爆地の使命だと思っています」。平成8年に開館した長崎原爆資料館の14代目にあたる館長に女性で初めて就任して4カ月あまり。被爆地が求める平和への思いを静かに語る。
長崎市出身だが、身内に被爆者がいるわけではない。初めて原爆と真剣に向き合ったのは、2年前に被爆者への手当ての支給を担う市援護課長に配属されたときだ。減りゆく被爆者数をデータで目の当たりにし、危機感を覚えた。
「次世代への継承には時間がない」。そんな思いを抱えて館長に就任した直後、新型コロナウイルスの感染拡大で約1カ月半の休館を余儀なくされた。来館者が見込めない中、被爆の実相を伝える動画をインターネット上で配信し、これまで来館しなかったような層への浸透も狙う。「コロナ禍は逆に関心を持ってもらう間口を広げるチャンス。コロナも核兵器問題も世界規模だけれど一人一人が当事者という意味では同じで、この機会に発信できることもある」と話す。
仕事に打ち込んできただけで、「初の女性館長」と称されることに戸惑いを覚えることもある。それでも、家に帰れば母親だ。息子はサッカーが好きな普通の高校生。特段、平和活動に取り組むことを強制していない。だが館長就任以降は、平和に関するニュースを教えてくれたりと、以前より関心を持ってくれている気がする。
「息子のような子供たちに伝えるにはどうすればいいか、考えることもできる。母親としての経験もこの仕事に生かせているのかな」。気負うことなく、真摯(しんし)に向き合いながら、被爆から75年を迎えた長崎の思いを発信していくつもりだ。(江森梓)