ミャンマー、スー・チー政権に初の審判 11月に総選挙(産経新聞)
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【シンガポール=森浩】ミャンマーのアウン・サン・スー・チー政権が、今年11月8日の総選挙で初の審判を受ける。先月、候補者登録が始まり、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相(75)率いる与党・国民民主連盟(NLD)が上下両院選で優勢とみられている。しかし、かつての軍事政権下で任命制の軍人枠が設けられており、過半数を獲得して単独政権を維持するには、両院で改選議席の3分の2超を確保することが必要だ。軍政からの歴史的な政権交代を果たしたNLDだが、少数民族問題を中心に逆風も吹く。
前回総選挙でNLDは改選議席の約8割を獲得し、軍系政党の連邦団結発展党(USDP)を抑えて圧勝。半世紀以上、軍が実権を握ってきたミャンマーで文民政府を実現した。スー・チー氏は選挙後、「すべて自分が決める」と宣言した。
ただ、NLDが公約を達成できたとは言い難く、重要公約だった少数民族との和平はほとんど進まなかった。国内では軍と自治権を求める少数民族武装勢力との内戦が一部で続いている。NLD政権は政府、軍、武装勢力による対話の場は設けたものの、停戦に向けた動きは広まっていない。地元ジャーナリストは「少数民族は和平や地位向上を期待して前回選挙でNLDを支持しており、失望感が漂っている」と分析。今回の総選挙では地域政党が独自に候補を擁立する動きが見える。
もう一つの柱の公約である憲法改正も停滞した。憲法改正には議員の4分の3の賛成が必要だが、上下院には4分の1の「軍人枠」があり、そもそもNLDが議会過半数を確保しても改憲は難しい。NLDは軍人枠を5%まで減らすことなどを盛り込んだ憲法改正案を議会に提出したが、今年3月、軍系議員の反対に直面し、軍の権限を弱める案はことごとく退けられた。
現行の制度上、憲法改正は困難だが、NLDは引き続き政権を担って機運を高め、将来の改憲につなげたい思惑がある。
スー・チー氏は、国際的にイスラム教徒少数民族ロヒンギャの迫害問題などで批判を浴びてもいるが、人口の約7割を占めるビルマ族を中心に支持は厚い。政府は1月、スー・チー氏の父で、建国の父として根強い人気があるアウン・サン将軍の肖像画を使った新紙幣の発行を開始。父の人気も利用しての支持固めを狙っている。
立候補受け付けは7日まで行われる。