天国の母と約束の舞台へ 磯辺高・鵜澤達弥 【特別な夏、変わらぬ思い】第2部(1)(千葉日報オンライン)

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 磯辺の鵜澤達弥は打席に入ると毎回ほえる。自らを奮い立たせるだけではない。天国の母へ元気な姿を届けるためだ。  昨年11月末。突然の別れだった。病院から帰宅した母の香織さんは「何でもなかったよ」。偏頭痛はこれまでもある。普段と変わらない笑顔を見て一度は安心したが、夜に体調は急変。救急搬送され、意識は二度と戻らなかった。  人工心肺装置を付ける香織さんに何度も呼び掛けた。「次は絶対打つから」「もっと頑張るから」―。反応がなくても、思いつくすべての言葉をかけた。やがてあふれる涙を拭い、目を閉じる母のすぐ隣で誓った。「最後の夏は必ず勝つよ。自分がヒットを打って引っ張るから」  劇症型心筋炎。香織さんは40代の若さでこの世を去った。試合となると欠かさず駆け付け、時には恥ずかしくなるほど応援してくれた。栄養士の資格を持ち、豪勢な弁当を早朝から作ってくれた。どんなに遅く帰っても、必ず玄関で出迎えてくれた。思い出すたびに涙がこみ上げたが野球は辞めなかった。「母さんが悲しむ。仲間にも心配させたくなかったので」。一週間後にはグラウンドに現れ、健気な姿を振る舞った。  習志野七中では市選抜メンバーにも入った。強豪校への道もあったが、「共働きの親に負担をかけたくない」と県立高校へ。昨年から主力を担い、新チームでは4番に座る。投手も務め仲間からの信頼も厚い。  卒業後は消防士を目指す。香織さんに「似合っているんじゃない」と勧められたことがきっかけで、「兄は大学生。父さん一人じゃなく、自分が家族を支えないと」と決めた。  ところが、大事な試験は9月。独自大会の時期は8月で、開催の喜びはあるが複雑な心境だった。一人の時間が長かった自粛期間中は特に出場へ思い悩んだ。  それでも、母が楽しみにしている舞台。誓った約束がある。仲間の呼び掛けも後を押し、「母さんに全然できなかった恩返しを野球でしたい」と出場を決意した。仏前には完投勝利した試合のボールが供えられている。「天国から見てもらい絶対活躍したい」。この夏、もう一球を母へ贈るつもりだ。

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(2020/07/27)