三浦春馬さんが遺した役者としての矜持 観たかった齢を重ねた演技(THE PAGE)

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 筆者はこの舞台の取材を18年の秋から開始し、演者と同じ台本も何度か読み込んでキャストに話を聞き、上演開始後は観客として家族を連れ観に行った。お金を払ってでも家族に観てもらいたくなる、それだけの価値ある舞台だと確信できたからだ。私の取材対象は三浦さんではなく相手役の娼婦ソーニャを演じた大島優子だったが、当然のことながら主人公ラスコリニコフを演じる三浦さんの存在はいつも頭の中にあって離れたことはなかった。  18年の暮れ、夜中に稽古場を訪れ取材した際、三浦さんのことも話題にのぼったが、大島は「ラスコリニコフはセリフ量も多いので、あまり話しかけないようにしています」と話していた。三浦さんは主役として舞台を引っ張る立場にあって周囲とのコミュニケーションをスムーズに取りつつも、自身がやるべきことにしっかり集中していたようで、共演者たちもまたそんなふうにストイックに舞台と向き合っている三浦さんに良い意味で気をつかいリスペクトしていたようだ。大島自身は最初に台本を読んだときの気持ちを「心にズドンと来ました。おなかの底のほうに何か大きな塊を落とされた感じ」と話し、2回目は「誰がどの役をやるかわかったのでキャストの皆さんの顔をイメージにはめながら読むと、それぞれの人物が本当に個性的で、濃密な人生を生きていて、この濃密さはなかなか味わえないなと。1回目はとにかく重いと思ったのですが、2回目はどこに目をつけていいのか台本の中で迷子になりました」と明かしている。この頃演出のフィリップ・ブリーンは、ラスコリニコフとソーニャの演技についてはあまりロマンス色を濃くしないで欲しい、と指導していた。日本公演のために再構築した上演台本であっても、あくまでベースはドストエフスキーの「罪と罰」であり、若くて人気のある俳優たちがロマンスを演じるのがウリの作品ではないからだ。

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(2020/07/25)