メルケル独首相、米中対立の中で歴史的転換 EU復興基金(産経新聞)

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 【パリ=三井美奈】欧州連合(EU)は21日、新型コロナウイルス禍に対応するため、共同債券を使った「復興基金」設立で合意し、財政統合へと前進した。議長国ドイツのメルケル首相は米中対立の中、危機克服に向けた「EUの団結」を重視し、国是だった財政均衡路線からの歴史的転換に踏み切った。  EU史上最長の5日に及んだ協議の後、メルケル氏はマクロン仏大統領とともに記者会見し、「よい合意ができてうれしい。今は安堵(あんど)している」と述べた。復興基金は今年5月、独仏首脳が共同提案した。  EU共同債といっても、打撃の大きいイタリアやスペインは債務国で、借金返済の力がない。経済大国ドイツ政府と国民が多くを肩代わりすることになる。それでもメルケル氏が決断したのは、「EU弱体化はドイツ経済にも打撃になる」という判断からだ。  コロナ危機でドイツは、財政黒字で蓄えた潤沢な予算を生かし、総額約1・2兆ユーロ(約146兆円)の経済対策を決定した。だが、国内総生産(GDP)は4割以上を輸出に頼る。しかも輸出総額の6割はEU圏向けだ。EU全域の復興は、ドイツ経済回復の前提条件といってよい。  メルケル氏の方針転換を支える環境もあった。新型コロナにより、イタリアやフランスで3万人以上が感染死する中、ドイツは死者数を約9千人に抑えた。メルケル氏は国内で高く評価され、支持率は71%に達した。「われわれの未来は欧州にある。責任を示すべきだ」という訴えは、国民の共感を得た。  ドイツの財政均衡へのこだわりは、第一次大戦後の超インフレに根差す。通貨価値がほぼゼロになるという苦い歴史を経て、EU共同債は「債務国の放漫財政につながる」という嫌悪感が国民に浸透していた。  ドイツだけでなく現在のEUには、「コロナ時代」の国際情勢に強い不安が広がっている。トランプ大統領の米国と習近平国家主席の中国が激しく対立する中、EU各国には米国に頼らず、「欧州の団結」を求める底流があった。  EU内で、財政基盤の弱い南欧と、財政規律を求めるオランダや北欧の対立は今後も続く。だが、今回の首脳会議で27カ国首脳は、「合意見送り」に逃げなかった。米中対立の中での強い危機感が、妥協を成立させた。

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(2020/07/21)