再び上演する喜び そして師・蜷川幸雄の言葉(中央公論)
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新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、二〇二〇年二月から多くの劇場で舞台公演が中止、もしくは延期になっていった。劇場への人の出入りはメンテナンスのみでほとんど動きを止め、無人の期間が数ヵ月にわたって続いていた。
しかし、緊急事態宣言が五月末に明け、六月から日本各地の多くの劇場が少しずつ動き始めている。私の演出作『ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」イン コンサート』(東宝製作)も、本誌の発売直後の七月十八日に開幕する予定だ。八月五日まで毎日一回ずつ公演を行い、来場できないお客様に向けては有料での配信を予定している。
本作は、元々は七月から九月まで東京・日比谷の帝国劇場を皮切りに全国各地で上演するはずだった『ジャージー・ボーイズ』というミュージカル作品をコンサートヴァージョンにしたものだ。コンサートヴァージョンと言っても、そもそも本作は実在のコーラスグループ「ザ・フォー・シーズンズ」の物語で、その楽曲で構成されたカタログミュージカルであるから、ヴァージョンを変えてもその魅力は十分に伝えることができると思う。
ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』のアメリカ・ブロードウェイでの初演は二〇〇五年だ。大変な人気作品のため、日本版の上演権を取るのに一〇年かかり、日本人キャストによる日比谷・シアタークリエでの初演は、二〇一六年。その後、日本のお客様からも大変に大きな声援と熱狂的な支持を得て、二〇一八年に再演。そして今回二〇二〇年に再々演を迎えるはずだった。
本作は世界中で上演されているが、実はコンサートヴァージョンは私たちのカンパニーが世界初の上演を果たしている。ミュージカル版に続いてこちらも権利元との長い交渉の末に許諾を得て、二〇一八年に渋谷・東急シアターオーブでの上演を実現。それらの実績を経て、帝国劇場、全国の劇場での公演へと漕ぎ着けたのだ。
そこにこのコロナ禍である。五月に、当初予定されていた六四公演を休止したのは苦渋の決断だった。
緊急事態宣言が明け、公演再開を模索するにあたり、もちろん帝国劇場でもミュージカルでの本編上演を目指した。しかし、依然残るコロナの影響を考慮する必要があり、演出家として東宝演劇部と話し合った。コンサートヴァージョンであれば、舞台上での俳優の身体の接触を避けることができる。そして、大切なお客様の安全を確保しつつ、作品の