新型コロナワクチン、ハイリスクの高齢者に効きにくい可能性(ナショナル ジオグラフィック日本版)
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胸のまん中に人差し指を当て、その指を胸骨に沿って上に走らせ、首との境目の直前で止めてみてほしい。そこの骨のすぐ後ろ、二つの肺に挟まれた中間にあるのが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いの鍵となる臓器、胸腺(きょうせん)だ。
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胸腺は、幼児のときは板ガム1パックくらいの大きさで、思春期にかけて大きくなり、その時期を過ぎると徐々に萎縮していく。
その役割は、免疫細胞であるT細胞をつくることだ。T細胞は大軍をなして病原体と闘い、また一部には、抗体などの追加の防衛策を講じるものもある。
胸腺とT細胞のこうした特徴からは、なぜ年を取るほど、COVID-19のような新たな感染症に対して二重の意味で不利なのかが見えてくる。
まずひとつには、加齢によって胸腺が次第に脂肪組織で満たされ、T細胞が減ることが挙げられる。その結果、新たなウイルスを撃退する装備が不足してしまう。
ふたつ目の理由は、ワクチン開発が一筋縄ではいかなくなることだ。ワクチンは、わたしたちの免疫系に指示を与え、T細胞はその伝達や記憶を助ける。40~50歳頃になると、そうした役割を担うT細胞が大きく減ってしまうのだ。
COVID-19の出現により、研究者は、ワクチンが高齢者に対してどのような効果を発揮するかについて、これまで以上に注意を払う必要が出てきた。たとえば米モデルナ社は、新たなmRNAワクチンの第1相試験の最初の解析結果を7月14日付けで医学誌「New England Journal of Medicine」に発表し、現在は55歳以上の成人のみを対象とした第2相試験を進めている。
「ごく最近まで、ワクチン業界では、小さな子供たちの命を救うことに焦点が当てられてきました」と語るのは、世界保健機関(WHO)のマーティン・フリーデ氏だ。「ワクチンを最も必要としている人たちが、実際にはワクチンが最も効かない人たちなのかもしれません」
高齢者を対象とした試験が重要な理由としてはまた、だれもが同じように年をとるわけではないことが挙げられると、フリーデ氏は言う。さっそうとゴルフ場に出かける人もいれば、歩くのもおぼつかない人もいる。そうした個人の体力の差が、ワクチンへの反応の違いを生む可能性もある。
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