小さな声を伝えるノンフィクション・コミック:ゆめの『心を病んだ父、神様を信じる母』(GQ JAPAN)

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これまで「女性による表現」に関心を寄せてきた人間として、「これはきっとフレッシュで刺激的な作品の宝庫に違いない」と思いつつ情報収集がなかなか追いつかない分野のひとつに、主に作者の体験を元にしたエッセイ漫画があります。近年では多くの出版社がこの分野に参入し、書店では既存の漫画コーナーとは別のところに棚が設けられていることも多いようです。 日本の漫画史を振り返ったとき、2010年代は少年漫画・少女漫画・青年漫画といった旧来の掲載誌に依拠したジャンル分けにすんなり収まらない作品が爆発的に増え、人気を博した時代とされるのではないでしょうか。出版業界の規模が年々縮小していく傍らで、新興のウェブメディアとネットを利用した個人の発信が漫画界の勢力図を書き換えてきました。その一角でエッセイ漫画の存在感がぐんと大きくなったのも、SNSの一般化によって、世間的には「何者でもない」とされる個人だって豊かな物語を持っているということが以前より理解されるようになった時代の気分のあらわれなのだろうと思います。文学の世界で著者と語り手が重なる「オートフィクション」と呼ばれるジャンルが人気を集めた流れとも繋がりますね。 さて、私が今回ご紹介するゆめの先生という漫画家さんを認識したのは、ご本人がnoteで無料公開している『フィルムの映画史』と題された作品がTwitterでリツイートされてきたのがきっかけでした。名画座でアルバイトをはじめた女の子が映画の仕組みや歴史を同僚に教えてもらうという設定で、現在第2話まで公開中。第1話ではフィルムと映写機の仕組みがわかりやすく解説されています。絵柄もイラストレーション的に整理された線でシンプルにかわいらしい。いい意味で公共機関の広報などのお仕事にも採用されそうな親しみやすさがあります。 『フィルムの映画史』は、「ゆくゆくは文章、写真での解説も満載な形で本にしたいと計画しています」(noteより)とのことで、それは楽しみだなと無料公開されている他の作品も読み進めるうちに、この人は以前ネットでちょっと話題になっていた『ヘヴィメタルが大好きだった話』の作者さんか! と気づきました。高校時代、メタルに夢中になった経験を描いた心あたたまる4ページのエッセイ漫画です。クラスメイトにドン引きされ、母には心配され、「私には全然似合ってないよな」と自覚しながらもときめきが

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(2020/07/20)