プラド美術館のドキュメンタリーとは、すなわちスペインを観る映画だ。(Pen Online)

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近年、美術館を巡るドキュメンタリー映画が続々製作されており、満を持してプラド美術館の映画が登場した。待ちかねていたファンも多いだろう。 本作は先行映画とは少し毛色が違い、所蔵絵画の紹介をメインにするのではなく、スペインという特殊な風土・歴史・文化をも含めた物語性に重きが置かれ、見ごたえたっぷりだ。 【映画情報詳細】『プラド美術館 驚異のコレクション』 映画の予告編に(ユーチューブでご覧ください)、パンフレットから筆者の一文も紹介されたので再録しよう──「荒涼たる風土、暗い情熱と暴力性、高貴な魂と気品、異形のものたちへの傾倒……それらが混然と一体になり、類を見ない独自性で迫ってくる。それがスペインであり、プラドもまたスペインそのものなのだ」。 プラド美術館のもうひとつの特徴は、ルーヴルや大英博物館などと異なり、他国から力づくで奪った作品が一点もないこと。すべて歴代王家と宮廷の趣味嗜好によって大金を投じて注文、ないし購入したものばかりだ。つまり総花的ではなく、太い背骨に貫かれたコレクションとなっている。 ティツィアーノ、ルーベンス、ボス、グレコ、ウェイデンはもちろんのこと、スペイン自体が生み出したふたりの天才ベラスケスとゴヤの最良の作品が揃う。カメラがそれらの絵に接近してゆくと、肉眼では見えなかった新たな発見に驚かされる。 ナビゲーターを務めるのは、アカデミー賞受賞者の名優ジェレミー・アイアンズで、深みのある彼の声は舞台の台詞を思わせ、ドラマティックな音楽と重なって、絵の中の遠い過去へと我々を誘うようだ。とりわけティツィアーノ作『ミュールベルク戦でのカール五世騎馬像』では、戦に次ぐ戦にあけくれてスペインを「陽の沈まぬ国」に押し上げ、ついに力尽きた老王の悲哀がアイアンズの声を通して伝わってきた。必見!

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(2020/07/20)