110メートル障害・増野元太、晴れた心「自分の頑張り次第」 引退から現役復帰(産経新聞)
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一度トラックを離れたハードラーは今、以前とは全く違った気持ちで走っている。2017年世界陸上選手権男子110メートル障害代表の増野元太(メイスンワーク)。新型コロナウイルスの感染拡大が一時、落ち着きを見せ始めたのを契機に練習を再開した27歳は「シンプルに陸上競技を突き詰めながら楽しんでやっています」と前を向いている。
社会人2年目の前途は洋々かと思われていた。3年前、増野は日本選手権で当時の日本記録に100分の1秒と迫る13秒40。世界選手権で日本勢として10年ぶりに準決勝に進んだ。
周囲が期待したのは東京五輪での一層の活躍。しかし、本人は違っていたという。「(結果を出し始めても)生活の待遇が変わらなかった。五輪に出ても何も得られないのではないかという考えになってしまった」。両ひざ痛を抱えていたこともあり、競技に打ち込めなくなっていた。
「レース中、もう走りたくないと思うような状態でした」。18年末で所属先だったヤマダ電機を退社し引退した。北海道の実家に帰り、しばらくして建設関係の企業に就職。ただ、拘束時間が長く、その仕事は数カ月しか続かなかった。
転機は陸上教室。家族や大学の先輩の勧めで学生らの指導役を務めた。交流が広がり、知人の仲介で、墓石販売などを手掛ける「メイスンワーク」から支援を得る話がまとまった。競技復帰を決めたのは19年秋だ。実業団チームの一員でなく、プロのように活動できる環境に、やりがいを感じたという。
ブランクの間、77キロあった体重は70キロを切るまでに落ちていた。「筋肉の強さに頼らず、うまく全身を使える意識になった。これから先は全部、自分の頑張り次第です」。心にかかっていた靄は晴れた。東京五輪の延期でできた時間で力を付け、参加標準記録13秒32を目指していく。(宝田将志)