アメリカでリベラルと「レフト」が衝突する「人種主義Racism」。「人種」概念の否定と遺伝的な「ヒト集団」が混乱を起こしている【橘玲の日々刻々】(ダイヤモンド・ザイ)
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著名な進化心理学者であるスティーブン・ピンカーに対して、アメリカの大学を中心に542人の研究者が、これまでの「人種主義的」発言を理由に、アメリカ言語学会のフェローから除名するよう求める請願書を公開した。それに対して、ノーム・チョムスキー、フランシス・フクヤマ、J・K・ローリング、マルコム・グラッドウェルなどを含む有識者が“A Letter on Justice and Open Debate(正義と自由な討論についての手紙)”で、過剰なポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)が思想信条や表現の自由の脅威になっているとの懸念を示した。
「この息の詰まるような(ポリコレの)空気は、最終的に、私たちの時代の死活的に重要な大義を毀損するにちがいない。(自由な)討論への制約は、抑圧的な政府によるものであれ、不寛容な社会によるものであれ、ちからのないひとびとを不可避的に傷つけ、民主的な参加への道を閉ざすことになる」との一文が、アメリカのアカデミズムをとりまく状況をよく表わしている。
この象徴的な事件は今後、日本でも多くの識者が論じることになるだろうが、ここではなぜピンカーが「レフト」の標的になるのか、私見を述べてみたい。それは結果的に、「人種主義Racism」がアメリカ社会においてどれほどやっかいな問題かを示すことになるだろう。
●リベラルの「楽観主義」こそが、レフトにとっては殲滅すべき最悪の敵
アメリカでは、過激な主張をする左派を「レフト」とか「ラディカル・レフト」と呼んで、「リベラル」と区別するようになった。彼らが、民主党の大統領予備選などを通じて、トランプ=共和党の保守派だけでなく、リベラルとされる知識人たちをもはげしく攻撃したからだ。ピンカーは「リベラルを騙る人種主義者」の代表として、これまでもずっと標的にされてきた。
2004年に『タイム誌』の「世界でもっとも影響力のある100人」に選ばれたスティーブン・ピンカーは、『暴力の人類史』(青土社)や『21世紀の啓蒙』(草思社)などで、「18世紀の“啓蒙の時代”以降、世界はますますゆたかで平和になり、人類は幸福になった」と繰り返し述べている。
[参考記事]●「世界がどんどん悪くなっている」というのはフェイクニュース。先進国の格差拡大にも関わらず「公正なルール」のもとでの不平等は受け入れられる
こうした「