「集大成的作品」「これまでの小説とは違う」吉田修一選考委員が講評 第163回芥川賞(産経新聞)

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 5人中4人が初候補というフレッシュな顔ぶれとなった今回の芥川賞。高山羽根子さんの受賞作「首里の馬」(新潮3月号)は、沖縄を舞台に主人公の女性と在来種の馬の奇妙な出会いをつづった物語だ。会見した選考委員の吉田修一さんは、「これまでの集大成的作品。3回目の候補で『孤独な場所とはどういう所か』を描こうとしているのが見えた」と称賛した。  一方、同時受賞した遠野遥(はるか)さんの「破局」(文芸夏季号)は、体育会系の男子大学生の迷いのない内面とその裏に潜む破綻を淡々と描いた文章が評価された。「登場人物が新鮮で主人公のアンバランスさが魅力的。これまで読んだ小説とは何かが違うとみな言っていた」(吉田さん)  受賞に一歩及ばなかったのが、劇作家として活躍する石原燃(ねん)さんの「赤い砂を蹴る」(文学界6月号)。亡き母が行きたがっていたブラジルを旅する女性が主人公の作品。吉田さんは「いろいろな“武器”を持たれているが、生かし切れていない」と惜しむ。  主人公の男性が以前思いを寄せていた女性の写真から思い出をたどる岡本学さんの「アウア・エイジ(Our Age)」(群像2月号)は、「あまり新鮮な感じを受けなかった」として受賞を逃した。幼なじみへの憎しみを回想する三木三奈さんの「アキちゃん」(文学界5月号)は、「小説のテーマであるトランスジェンダーの部分が作り物めいている」などとして、支持を集められなかった。

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(2020/07/15)