人気グループ「まるごと乗っ取り」セッション ハービー・ハンコック・グループ【ジャズを聴く技術 ~ジャズ「プロ・リスナー」への道】(サライ.jp)

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文/池上信次 前回の「まるごと乗っ取り」セッションの続きです。リタ・ライス&ザ・ジャズ・メッセンジャーズより時代はずっと後になりますが、1979年にヴォーカリストの笠井紀美子が作ったアルバム『バタフライ』(ソニー)がすごいことになっています。これはバックに、まるごとハービー・ハンコック・グループをフィーチャーしています。ハンコック・グループは特定の名前こそついていませんが、73年の『ヘッドハンターズ』(ソニー)の大ヒット以来、ジャズ・ファンクの新しいスタイルを生み出し、(若干のメンバー・チェンジはあったものの)、ハンコック個人とは違う唯一無二の強烈な「グループの個性」を発揮しつづけてきました。笠井紀美子はこの1年前に自身のアルバム『ラウンド・アンド・ラウンド』(ソニー)で、1曲だけハンコック・グループをフィーチャーし、ハンコックの代表作「カメレオン」を録音していましたが、こちらはなんと、アルバム全曲でフィーチャーするという大胆さ。ハンコック・グループがヴォーカリストをフィーチャーするなら珍しくはないですが、これは笠井紀美子がリーダーなのです。しかもほとんどの曲がハンコックが作ったハンコック・グループのレパートリーなのです。ハンコックの曲を歌うのにはこれ以上は望むべくはない最高のバック・バンドであるのは当然ですが、大胆にもほどがあるというか無謀にも見える企画です。しかし、これが大成功。 当時のハンコック・グループはハンコック自身のヴォコーダーによる歌もひとつの特徴だったのですが、それを肉声で置き換えるという発想があったのでしょう。ハンコックも、おそらく試してみたかったのではないでしょうか。また、ヴォーカルに合わせた普段とは違うキイでの演奏もあり、グループの実力の高さも垣間みることができます。当然ながら完全にハンコック・グループのサウンドなのですが、笠井紀美子、ハンコックのどちら側から聴いてもじつに新鮮なサウンドのアルバムとなりました。

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(2020/07/15)