事故被害者に新たな選択肢 将来利息も控除されず 逸失利益定期払い(産経新聞)

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 事故による将来の「逸失利益」を定期的に支払うことができるとの初判断を示した9日の最高裁判決。これまでほとんど検討されてこなかった賠償の手法に光を当てたものだ。  一括払いと定期払いの違いの一つは、将来分の利息控除の有無だ。一括払いの場合、労働できるはずだった67歳までに得られた収入を前もって一括で受け取れるが、67歳までの収入に対する利息は減額される。  将来の利息は判例上、民法の「法定利率」を基に計算する。その利率は今年3月31日まで民法で「年五分(5%)」だった。100年以上前の民法制定時(明治29年)に想定された利息と、今の超低金利時代の利息とは乖離(かいり)があり「およそ実際的ではない」(法曹関係者)との見方もあった。  まったく働くことができなくなった原告の場合、労働できた49年間の利息控除などを考慮した係数(ライプニッツ係数)を踏まえると、一括での受取額は約6500万円。一方、定期払いなら将来分の利息は加味されず、平均賃金を基にした額を49年間定期的に受け取れる。過失相殺がなければその総額は約2億5900万円の計算になる。  定期払いでは、将来の賃金水準や障害の実態に合わせて双方が変更判決を求めることもできる。最高裁判決は、被害者が67歳より前に死亡したとしても支払いを終えるべきでないとも判示しており、被害者にとっては有効な策といえる。  ただ、加害者が失踪したり、保険会社が倒産したりした場合の支払いに不安があるほか、保険会社とのやりとりが生涯続くといったデメリットもある。定期払いがどこまで浸透するかは未知数で、日本損害保険協会の担当者も「判決の影響を想定するのは難しい」と動向を注視する。  これに対し、交通事故被害者家族ネットワークの上田育生業務執行理事は「被害者救済の手段として選択肢が増えるのならいいことだ」と指摘。ただ、保険会社が生活実態を調査することの心理的負担なども強く懸念する。  原告代理人の青野渉弁護士は「逸失利益の定期払いは一つの合理的な方法。被害者にはデメリットもあるが、今回の判決が一つの選択肢として意識するきっかけになれば」としている。

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(2020/07/09)