羅生門 「わけが分からん」から大絶賛! ベネチアでの大評判に永田社長“手のひら返し”(夕刊フジ)

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 【生誕100年 世界のミフネ伝説】  日本映画史に燦然と輝く記念碑的作品だ。ベネチア国際映画祭で金獅子賞を、第24回アカデミー賞で名誉賞などを受賞。黒澤明監督と三船敏郎を世界的に押し上げたからだ。これ以後、三船には海外からのオファーが殺到したが、国内の映画を優先した。  原作は芥川龍之介の有名な短編小説「藪の中」と「羅生門」を橋本忍が脚色。人間のエゴイズムを追求した名作だ。  戦乱が続く平安の京都は疫病も流行し、廃墟と化していた。そこに男が3人。薪売りが、山中で侍が死んでいたと旅の僧に語る。多襄丸という盗賊、殺害された侍、そしてその妻。3人の証言は三者三様、食い違っている。薪売りはいう。みんな見栄と護身のため嘘をついていると。実は事件のすべてを見届けて真相を知っていたのだ-。  話の導き役である薪売りは志村喬、盗賊の多襄丸を三船、武士を森雅之、その妻を京マチ子が演じる。  橋本忍は伊丹万作の弟子になり、シナリオの勉強をしていたが、試しに書いた「藪の中」の脚本が黒澤監督の手に届いた。黒澤監督は映画には短いと考えて「羅生門」を抱き合わせた。  大映に持ち込み、難色を示す永田雅一社長を「セットでできるから」と説得。ところが撮影所前に建てたオープンセットは何と間口33メートル、奥行き22メートル、高さ20メートル、そこに1・2メートルの太柱18本という巨大さ。しかも延暦十七年と彫った瓦4000枚のおまけ付き。重役の川口松太郎もこれには口をあんぐり。「黒さんに一杯食わされた」と苦笑いしかなかった。  試写では永田社長が「わけが分からん」と怒って退席。総務部長を左遷し、企画者をクビにする騒ぎに。ところがベネチアで大評判になると手のひらを返したように大絶賛。当時は「黒澤のグランプリ、永田のシランプリ」と揶揄されたそうだ。ここから大映は娯楽路線から「源氏物語」「雨月物語」といった文芸大作路線へとシフトチェンジしていった。  後年、黒澤がある雑誌のインタビューで「なぜ三船ばかり使うのか」と問われ、「あんな役者は日本中探しても他にいないからだ」と答えた。「いなくなったらどうなる」との問いには「僕はもう映画を撮れなくなるかもしれない」とも。  複数の視点から捉える方法を「ラショーモン・アプローチ」というそうだ。今では多くの監督がまねするほどになっている。 (望月苑巳)

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(2020/07/08)