学芸大学・こなもん食堂 Tronc──嶋浩一郎さん特別寄稿「“学大“の事情通は昼にたこ焼きを焼く」【自由なインディーめしの注目5店】 By 小石原はるか(GQ JAPAN)

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東横線のガード下の路地。白いドアを開けるとたった5席のカウンター。ここは、関西風のたこ焼きなどのいわゆる”粉もん“を「ヒトミワイナリー」のワインとともに楽しめる店「こなもん食堂 Tronc。」。 一見ファンシーな店なのだが、騙されてはいけない! この店の店主は只者ではない。店主の進藤茂幹さんは、ただ単にたこ焼きを焼いているだけの人ではないのである。 飛び込みのお客にとってみれば「うまいたこ焼きとお好み焼きを焼いてくれる関西弁の可愛いおっちゃん」ということになるのだろう。だが、ある者は彼を「百戦錬磨のネゴシエイター」と呼び、ある者は「“学大“の梨元勝(ちょっと古いけど一世を風靡した芸能レポーターだよ! 恐縮です)」と呼び、ある者は「カルチャー界の事情通」と呼ぶ。進藤さんはたこ焼き屋を営むまでに様々なキャリアを体験していて、それが時にディープな客との会話を生むのである。 関西出身の彼の最初のキャリアは、テキスタイル会社勤務。ファッションやデザインに造詣が深いのはそのためだ。次のキャリアが映画関係の古物商。京都に事務所を構え、獲物目当てに「はー、はー」言いながら集まる映画マニアとチラシやパンフレットを巡りマニアックなトークで商談を繰り広げた。そのおかげで、60年代以降の映画に関する知識は驚くほど。その後東京に拠点を移し、絵本を中心にした古書店を開く。だから、作家、特に絵本作家についての知識も度肝を抜く。 そんな進藤さんの店のカウンターに座れば、おのずとトークはマニアックに。映画関係の古物商をやっていた時の話は鉄板で、なるべく安い値段で買い取ろうとするお客と、なるべく高く売りたい進藤さんの心理戦の話は秀逸。進藤さん曰く、「いくらだろうがこのお客は絶対にこれを買う」と確信するタイミングがあるそうだ。「その瞬間を我々は『網にかかった』って言ってました」と、たこ焼きをリズミカルに回転させながら教えてくれる。時に交渉は夜のバーで行われることもあったそうで、カウンターで二人の男が当時100万円以上の値のついた映画のチラシを見つめつつ、一人は恍惚の表情、一人はヒットマンのような冷徹な表情で、ボソボソと静かな交渉が行われていたそうだ。そういう時の進藤さんの必殺技は「明日の朝までそのチラシ預けますわ」という一言。えーっ、そんな貴重なアイテムを担保もなしに預けちゃうの?と思うのだが、

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(2020/07/05)