開業直後の緊急事態を乗り越えた3人のシェフ。彼らを襲った空白の2カ月とは。(Pen Online)

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「なんのために自分で店を開いたのか。初心を見失ってしまいそうでした」。苦笑いを浮かべながら、「ユヌパンセ」の馬堀直也シェフは、緊急事態宣言以降の日々を振り返る。フレンチの世界に飛び込んで25年、パリ近郊のレストランやイギリスの星付き店でも修業を積んだ。2019年2月末に麻布十番の人気レストラン「カラペティ・バトゥバ!」のシェフを辞め、開店準備にいそしむこと10カ月、満を持しての開業だった。 ワイン1杯から利用できる気安さと、美しく実直な味わいのフランス料理で、すぐに客の心をつかんだ馬堀シェフ。新型コロナウイルスが目に見える脅威となっても、3月末までは満席の日も珍しくはなかった。「けれども、志村けんさんの訃報で潮目が変わった気がします。キャンセルが相次ぎ、客足もパタッと止まりました」。トドメを刺したのが、4月の緊急事態宣言だ。 「見たことのない売り上げの日が続きました」。ならば辛かったのかといえば、しんどい、大変という気持ちはなかったという。「生きるのに必死で、記憶がないんです。自分がオーナーなので、家賃の支払いや相方(ソムリエ)の生活も考えなければなりません。売り上げを立てるために苦悩しました」。4月下旬以降、東京都の要請の範囲で店内営業をしながら、シャルキュトリーとワインのテイクアウトも開始する。 「盛り付けや食材の香りも意識して、お店で一皿ずつ提供するのが料理人という信念があるため、テイクアウトを販売するか否か、ギリギリまで悩みました。持ち帰ったお客さんが、どう食べるかを想像できないから、いまでも『これで喜んでくださるのかな?』と迷いながらつくっています」 しかし仕込みに、一切の妥協はない。結果、店内営業に加えて、約10種のシャルキュトリーも調理することになって、多忙を極めた馬堀シェフ。日々の疲労と緊張で胃腸が弱って、病院にかかる羽目になった。身体も悲鳴をあげたからこそ、この2カ月の記憶が無に近いのだ。 またもうひとつ、馬堀シェフを苦悩させたのがアボカドの問題。スペシャリテ「ズワイガニとアボカドのムース ウニとコンソメのジュレ」が提供できなくなった。「アボカドは足が早いんです。お客さんの数が読めないなら、メニューに載せられません」 それでも、味わいが近い料理をと生まれたのが、「ホワイトアスパラガスのムース オマール海老とコンソメのジュレ ウニと初夏の

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(2020/07/01)