<北朝鮮>内部文書入手 全民軍服務制の実態を探る(1) 青春なし…兵役13年の過酷 石丸次郎(アジアプレス・ネットワーク)

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私の手元に、北朝鮮国内の取材協力者が入手した内部文書がある。2020年3月に地方の労働党機関が発行したものだ。 タイトルは「<法解説提綱> すべての公民は軍服務の要求を徹底して実現しよう」で、全5ページ。幹部と勤労者を対象とした政治学習のためのテキストで、兵役に関する法秩序の順守と啓蒙のために作成された解説書だ。 「わざわざこのようなテキストを作って政治学習まで行うのは、それだけ軍服務法令を無視、違反する事例が看過できない水準で発生していることの裏返しだ」 というのが、文書を一読した軍服務経験のある脱北者の感想だ。 2012年12月開かれた第10期6次最高人民会議(国会に当たる)の常任委員会で制定された「朝鮮民主主義人民共和国軍事服務法」(以下、軍事服務法)を、あらためて国民に周知徹底させることが、この文書の目的だ。 この法の制定によって、北朝鮮では「全民軍事服務制」が宣布された。すなわち、全国民が、正規兵か予備兵、民間武力組織のいずれかで軍事に携わることが明文化されたわけだ。 北朝鮮の朝鮮人民軍の兵力は、令和元年版の防衛白書によれば約110万人とされている(実際は70万人弱と推定する研究者もいる)。これは北朝鮮人口の4.5~5%にも及ぶ。他に予備役が470万人と、民間武力組織の労農赤衛隊350万人いると言われる(韓国の正規兵力は2018年に62.5万人)。 正規兵力が人口の5%だとすると、日本でいえば630万人に相当する。この膨大な兵員をどのように確保するかは、金正恩政権にとって極めて重要である。朝鮮人民軍が体制運営の要の一つであるからだ。 アジアプレスでは、北朝鮮国内の取材パートナーに、6月初旬にある地方の軍服務担当部署に行ってもらい、新兵補充の実際を調査した。詳細は後述するが、2020年の男子の軍服務期間は13年、女子は8年とのことだった。北朝鮮の若者のほとんどは、実に過酷な青春時代を送らねばならないのである。 内部文書と国内調査を具体的に紹介していきたい。

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(2020/06/30)